「にしても…こっからだとよく見えるな−」
「せやろ?」
つかよく見つけたな佐野。
ちなみに此処は体育館の2階。
植木達に気付かれないでバトルを見れる場所だった。
--『空白の才』--
(さーて。どんな戦いを見せてくれるやら)
どうやら相手の能力者はかなり戦い馴れているらしい。
経験の差なのだろう。
(植木も結構いい線いってると思うんだけどなー)
平の技の応用を見て即、イメージし具現させる辺りが。
植木が出した木に実っていた栗が平に当たる。
ギィンッ
「おーすごいすごい」
こちらのほうまで栗が飛んできたが佐野が手ぬぐいを鉄に変え、なんとかやり過ごした。
「…なんや。あんま驚かへんなお前」
つまらんと佐野が額に巻き直しながらに言う。
「驚いてほしかったのか?」
「どっちかっていうとな」
「まぁ非常識には慣れてるからな−俺」
身内とか身内とか俺とか。
がケラケラと笑う。
「あ、植木が立ち上がった」
タフだな−。と言う。
「…はどう思う?」
「何がだ?」
植木のことや。と佐野が言う。
「んーどうって言われてもな…。初戦にしては良い方なんじゃね?」
会話してる間にも平の攻撃を受け、そのたびに立ち上がる植木を指さしながら言う。
「…人は守りたい人がいると強くなるからな」
「何か言うたか?」
「いんや、何でも」
どうやら佐野には聞こえなかったようだ。
「…そろそろ決着つくみたいやな」
そう佐野に言われ下を見ると、平は水を全て使い切っていた。
こりゃ植木の勝ちかなと思ったその時――
「水ならあるですよ−!!」
突如、平の神候補が現れ平に水を与えた。
「なっ、ずり−!」
どうやら平の神候補は神になるためなら何でもするらしい。
「…はここにおれよ」
「おい、佐野?」
佐野は何も言わずにひょいっと柵を乗り越え下に降り立ち、平の攻撃を手ぬぐいではじいた。
「な…!?」
「あの技をあっさりはじいただとぉ!?」
急に現れた佐野に驚き、いとも簡単に防いだことに戦慄する平達。
「…神候補が手ぇ出すんはルール違反とちゃうんか…」
「お前は…稲穂中の佐野!?」
突然の佐野の登場に驚くも、すぐに不敵な笑みを浮かべる神候補。
「要はばれなきゃいいんですよ」
「けど、流石に3対1はきついんじゃねぇの?」
「何っ?!」
上からの声が降りかかる。
「…お前なぁ」
「ここに居ろとは言われたが声だすなとは言ってねえだろ」
呆れる佐野にが言う。
「…。なるほどお前が…」
(コイツ、俺のこと知ってんのか?)
わずかに眉をひそめる。
と、そのすきに神候補が指を動かす。
「なら−これでもですか?」
「?!っな」
指を動かしただけで俺と佐野が金縛りになってしまった。
「セコい手使いやがって」
「ははは!僕の金縛りで動けないお前らなんかもう怖くないです!」
「っ佐野!!」
「…後でお前も始末してやるです!」
俺も佐野も動こうにも体が金縛りのせいで動かない。
(こんなところで負けちまうのかよ…!!)
親友を助けられずに、何も出来ずに。
平の攻撃が佐野に当たる、その瞬間――
パァンッ
突然音がしたかと思うと、佐野の横から木が伸びて平を気絶させてしまった。
「植、木?」
それは力尽きて倒れていた植木だった。
(まさかあの状態でか…?)
二人も目の前の光景に只々唖然とするばかり。
「ば、ばかな…なんで立ち上がってこれる!!?」
「おい佐野っ、大丈夫か?」
「あ、ああ」
いち早く金縛りからとけたが駆け寄る。
「どうやら平は完全に気絶しとるようやな」
「つかいつの間にかあの神候補逃げやがったし…」
(ま、外にあいつらいるし大丈夫だろ)
気配を見つけ先ほどの神候補のことは頭の隅に追いやる。
「大丈夫か植木!」
「あれ、どしたんだ?」
「腹へった!」
「……そんで倒れてたんかい」
一気に佐野が脱力する。
「んじゃ、これやるよ」
「おにぎり…」
「何でが持ってるんや」
「ん−?ただ単に腹へってたからコンビニで買っておいたやつ」
ちなみに包帯とかもあるぞ?
鞄から次々と物を出すに今度こそ佐野が崩れた。
「『空白の才』?」
「優勝したら自分の欲しい”才”を一つ貰えるんだよ」
軽く応急処置をして空白の才について話をする。
どうやら植木は何も知らずにこのバトルに参加していたらしい。
「ちなみにオレの夢は”発掘の才”手に入れてマイ温泉を掘り当てることや!」
「出た。この温泉好きめ」
「何言うんや!」
温泉はなあ……!と熱く語る佐野をいつものことだから気にすんなと植木に向かっては苦笑する。
「のほうは何かあるのか?」
「んー俺は何も考えてない。別になくてもいいし」
植木に聞かれあっさりと言う。
「じゃあ何ではコレに参加してるんだ?」
「それはオレも思うとった」
佐野も語るのをやめて身を乗り出す。
「だって『空白の才』を悪用する奴らもこのバトルに出てるんだぜ?それを見過ごせるかっての」
これは、俺の神候補の蛍兎に『空白の才』のことを聞いた時から少なからず思ってきた事だ。
「も同じこと考えとったんか」
「ってことは佐野もか?」
「せや。ってゆーても結局”マイ温泉”のついでやけどな!!」
「お前らしいというかなんというか…まあいいけど」
――同時刻
「くそっ!佐野にならともかく…あんな雑魚に…!」
神候補のラファティだった。
−と
ブンッと音をたてラファテイの足元が抜け、吸い込まれていってしまった。
「あーあ、やっぱり落ちたか」
「ルールその50…”神候補はいかなる場合も、バトル中の手助けを禁止する”」
「ルールを犯せば地獄行きですね−」
「よぅ蛍兎。久しぶりじゃねえか」
「お久しぶりです。小林さん、犬丸くん」
「貴方も見てたんですか?」
「ええ。古書店巡りの帰りがてら」
のほほんとのたまう蛍兎。
「ところでワンコ。お前の担当してる…佐野か?植木のこと見逃しちまってよかったのか?」
「そういえばくんのこともどうするんですか?」
「う……さ、佐野くんは親友とも、ケガ人相手に戦うつもりはないそうです」
「それはよかった。くんも、佐野くんとは戦うつもりはないそうですから」
蛍兎がにこりと微笑んだ。
「そんじゃまたな」
「ああ。ごめんな。見送りできなくて」
「別に気にしてへん」
「そだ。今度遊びに行かせてもらうからな?」
「楽しみにしとるわ」
「よかったんですか?」
「別にまた近いうちに会えるだろうからな」
佐野と別れた後、降りてきた蛍兎と歩きながら話をする。
「それより蛍兎」
「何ですか?」
「結局、今回は何も出来なかった。俺は」
「神候補相手じゃ無理ですよ。流石に」
「そーなんだけどなぁ…植木を見ていたらなんとなくな」
彼は伸びるだろう。俺をこえるくらいに。
「久しぶりだな。こんなに強くなりたいと思ったのは」
あの時は、何もできずにただ待つことしか出来なかったけど。
「バトルも始まったことだし、そろそろ本気でいくとするか」
守りたいものがあるから、もう何も言わずに消えてほしくないから。
そう言うの瞳には強い意志が潜んでいた。
--後書き--
平戦です。やっっっっっとできました。
(試験一週間前です)