月夜に浮かび上がる一人の影。

顔こそ逆光の為分かりにくいが、少年の様に見える。そこまでであれば差ほど問題もなかっただろう。




少年の手に握られているのが死神の持つような鎌でなければ。




その少年に目をつけられた能力者達は次々と鎌の餌食にされたという。

かくしてその少年はいつしかこう囁かれるようになった。














--噂流し--










「「死の道化師ぃ?」」



「ま、そういう訳だ」

放課後、いきなり植木と森が目の前のコバセンに連行されてきたのは職員室。冷房もついており他の職員もいない為話し合いには丁度よい。

「言っとくが今の植木の力じゃ相手にもならねぇからな。一応、忠告してやる」

「ちょ…そんなに相手の能力者って強いの!?」

「強いぞーかなり」

「植木!絶対会わないようにするわよ!」

「すげぇな!会ってみてぇ!」

「あんたは人の話聞いてたかー!?」

がっくんがっくんと植木の肩をゆする森。

「つーわけだから関わらない方向でいけよー」

「…もし関わったら?」

「責任は持たん」




丁度その頃。

「…っくしょん。…誰か噂でもしてんのか?」

「かなり広まりましたからねぇ」

「つか蛍兎が広めたんだろーが」

俺は何もしていない。と愚痴る。学校帰りだったを蛍兎が見つけたのだ。

「にしても”死の道化師”て……。俺は何処ぞのPKKか」

「あはは。判る人少ないんですよね。困ったことに」

「確信犯かよ…。しかも困ってないよな逆に楽しんでるよなお前

「もちろん。決まっているじゃないですか」

その方が面白いですし。とにこやかに笑いながらのたまう。
ちなみに、”死の道化師”という異名を名付けたのは紛れも無く隣にいる蛍兎だ。
(俺はただあいつらが襲い掛かってきたから返り討ちにしただけなんだけどなぁ)
まあ噂とは色々と尾ひれがつくものなので仕方ないといえば仕方ないのだが。

「まぁ、これで余程俺に恨み持つ奴か物好き位しか掛かってこないだろ…多分」








数日後

「お前が『死の道化師』アルか?」

「………なんでこうなるんだ?」

おっかしいなーと呟きながらはがしがしと頭をかく。
いつもの学校からの帰り道の事。今日のノルマなんだったけなーめんどくさいなー等と考えながら歩いている時だった。いきなり目の前に黒い中国服を着た青年(?)が現れたのは。

「貴様、聞いてるアルか?」

「あーはいはい聞いてるよ聞いてます。けど用件聞くのは場所変えてからなー此処色々厄介だから」

ちなみに通学路のど真ん中。もう暫くすれば多くの下校生が此処を通る筈。他の奴ら見られたら何かと面倒だ。…俺が。
(しゃーない、あそこの河原でいいか)
もしかしたら植木達と会うかもしれないがしょうがないかと腹をくくる。

「あ、そいやあんたの名前は?俺は

「李崩アル」

「んじゃ李崩、ついて来てくれ」







「うーん。ここらでいっかな」

ぐるりと周りに人の気配がないか確かめながらが呟く。

「李崩、いいぞー」

へにゃ、と笑いかけるとビュッと風を切る音と共にの髪が揺れた。李崩が攻撃を仕掛けてきたのだ。

「技の切れがいいなーあんた」

「真剣に勝負する気、アルか?」

「そりゃもちろん。その方が李崩としてもいいんだろ?」

そう会話する間にも次々と李崩は攻撃を仕掛け、それを紙一重ではかわしていく。
(うーん。そろそろかな?)
そんなさなか、はトンッと大きく後ろに跳躍し間をとった。李崩は一気に距離を縮めようとし、

「…!」

急にの纏う気が変わり困惑した。
(何アルか……この気迫は)
ビリビリと肌を突き刺す様な殺気にも似た気。知らず知らずに李崩は半歩引く。

「さて、李崩」

にっこりとが告げる。

「覚悟は出来てるな?」
























--後書き--



男主くんの登場です。
そして神候補の蛍兎との掛け合いに力を入れつつ。PKKはドトハクです分かる人にはわかります。