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ぱらり、ぱらりと紙の擦れる音が静かな空間に響く。 空間を支配するのは書物特有の空気と二人分の微かな息遣い。そして頁をめくる音。 もはや休日にはお約束となってしまった光景である。 (流石、空目くんというか…来る度に思うけど、よくこんなに集められたものだな) ふ、と小さく息をつき沙羅は本を閉じる。 そして読み終えた本を手にとり壁際の本棚へ足を向ける。本を元の場所に置き、さて次は何を読もうかと視線を走らせた。 沙羅の蔵書もかなりの数になりつつあるがその殆どが魔道書な為、空目の所有する民俗学系統他には興味がある。 …とはいってもその所有する殆どが武巳いわく黒い系統なのは空目らしいというかなんというか。 ちなみに空目はまた分厚い書物を読んでいるらしい。 沙羅にとって空目といる時間は貴重だ。大低は稜子達も共に行動している為、このような二人きりという時間は余りない。 それを知ってか知らずか、二人きりだとあやめとユッカは遠慮して来ることは滅多にない。 沙羅は目的の本を見つけ、つつ、と背表紙をなぞり本を取り出そうとしたのだ、が。 (…取れない) むぅ、と眉をよせる。手が届くことには届くのだが後少しという所でとれないのだ。 沙羅が背伸びしてとろうとすると、別の手がのびて来てその本を取った。 「っ、空目くん…?」 「この本でいいのか?」 「あ…う、うん。えっと…ありがとう」 しどろもどろになりながら沙羅が礼を言うと、空目の微笑う気配がした。 す、と空目の手が沙羅の髪に触れて思わず小さく肩を震わす。 「あの…空目くん?」 「沙羅」 「…っ、」 息がつまる。 低く掠れた空目の声に 愛おしさをにじませた彼の瞳に 魅せられそうで 引き込まれてしまいそうで 髪にキスを落とされるたびに顔が朱に染まっていくのを自覚しながら、この人だけは敵わないと思う沙羅だった。(惚れた弱みとも言う) あれから。 真っ赤になって空目から逃げ出した沙羅は休憩の為、こぽこぽと紅茶を入れている。対する空目は平然として先程の本を読んでいるので恨めしいたらありゃしない。 「…どうしてあんな行動出来るかな。前は恋愛否定論者だったくせに」 むぅ、と入れたばかりの紅茶のカップの淵に口をつけて沙羅がうめく。それをぱらりと頁をめくりながらしれっと空目が返す。 「認識を改めただけだ」 「認識って…」 どのよ。と呟いたが教えてくれる気はないらしい。 「しいて言えば、感情と理性の辿りついた先が同じだっただけだ」 「………そ」 もう何も言うまい。 重ね重ね、彼には敵わないとため息をついた。 07/03/30 |