かしゃん 「あ」 陶器が割れる音との小さな呟き。 「…割れたな」 「見ればわかるってば。…これはもう駄目か」 はぁと名残惜しそうにはティーカップだったモノを見る。 「すまん」 「いいよ空目くん…。そのかわり街の案内を今度してくれる?」 苦笑しながら駄目もとで尋ねると、意外にも肯定の意がだされた。 「「それってデートっ?」」 なのに何故こんな事になったのだろう。稜子と武巳の言葉にこめかみに手をあてながらはため息をつく。 「違うとさっきから何度も言っているんだけど…」 「だってあの陛下だぞ!?」 「ちゃんもだけど魔王様が了承するんだもん。それってすごく珍しい事なんだよ!」 …私はただ週末の予定を聞かれたから答えただけなのだが。断っておくがあやめとユッカもついていく。 いつも思うが何故この二人はこうも恋愛事に持っていくのだろう。 「……空目くん、君も否定くらいして」 「……」 「君ね…」 部室の奥で黙々と読書をしている空目はどこ吹く風だ。 「それで?」 「亜紀までも…二人共、本当に何もないよ。目的は古書店巡りだから」 再度ため息をつきながら言うと不満の声を出された。 「…本当にちゃんって恋愛感情皆無だよねー…」 「そっちの思考は凍結して久しいもので。それにそんな余裕ないから」 だからこの話はおしまい。と二人に告げ中断していた読書を再開させた。 週末、予定通り空目に街を案内してもらう事に。途中、稜子と武巳の着いて来るのに気付き、なし崩しに一緒に買い物をする事となった。今はその帰り道だ。 「今日はありがとう。助かったよ」 「気にするな。こちらも探していた物が見つかったからな」 「ならよかった……」 「?」 不意に立ち止まったに訝し気に空目とあやめが遅れて立ち止まる。の目の前にはアンティーク調の雑貨屋が在った。 「…ごめん空目くん。此処を見ていきたいから解散で構わない?」 苦笑しながらい言うと暫く黙して付き合う。と否定された。 「…本当に平気?」 「かまわん」 「なら、いいけれど」 からん、とドアのベルが鳴る。洋燈が灯り、中は思ったより広い。 壁際には棚が鎮座し、陶器の絵皿や小物が置かれ中央に配置されたテーブルにはヘアピンやアクセサリー類等が置かれていた。 そんな中を縫うように進む。 こつ、と立ち止まる。 「」 「なに?あぁ、コレ?」 が持っていたのはライラックの花模様の描かれた白磁のティーカップだった。数は4つ。 「うん。目に止まったから」 「お客さん、それをお買い求めで?」 奥から店主らしき人が現れる。が手にしている物を見て柔らかく笑む。 「それが貴女が願うものですか?」 その言葉に軽く目を見開き、は哀しそうに微笑む。 「…おそらく、そうなのだろうね。包んでくれますか」 「そうですか。祈鎖、あのカップを4つ、頼むよ」 後ろの店員に告げる。視線をそちらに向ける際、空目とあやめがなにやら言葉を交わしていた。 「またおいで下さい。『メビウス』に。お客さんの望むものが、見つかるかもしれません。 来れるならば、ね」 そう言って『彼と彼女』は店の奥へ掻き消えた。 「…悪いね。付き合わせてしまった」 包んでもらった物を腕に抱きながら帰路を歩く。 「、あそこは一体なんだったんだ?」 空目の問いに何と言えばいいかな…と微笑う。 「望む物を見つける事ができる店。と言えばいいかな。あそこで扱っているものの殆どが呪物らしいね」 と言っても、人に害が無い物だけどと続ける。 「今日は本当にありがとう。また学校でね」 「あぁ。…」 「なに?」 手を出せと言われ、訝しく思いながらもとりあえず言われた通りにすると小さな紙袋を渡された。 「…………もしかして、さっきの店で買ったの?」 「あやめが選んだ。お守りだそうだ」 「あやめが?」 視線を向けると戸惑いながらもこくん、と頷く。 中には雫形のペリステライトが鎖に絡まっているペンダントが入っていた。 それを見て思わず空目を見、ついであやめに視線を向けまた空目に戻す。 「そう…。ありがとう、二人共」 夕闇の中で、ははにかむ様に微笑んだ。 Nanako様からのキリリク22000で「空目とのショッピング」との要望でしたが、 一応基盤は原作沿い夢主で、呪いの物語の後夏休み前の時間枠を意識してみました。 えーと、いかがでしたか? ちなみに、ペリステライトは実際に存在する鉱物です。おそらく皆さんも知っている石です。 暇があれば探してみてください。思わず夢主が二人に視線を向けた理由が解りますから(笑) 花言葉や石の意味って面白いですよね。 なお、こちらはNanako様のみのお持ち帰りとなります。 grolia 邑月紅鵺 07/04/21 |