あれから一週間が経ち、亜紀の指の怪我も治った頃、達は文芸室に集まっていた。
「…さて、君達は何が聞きたいの?」
ぐるりと皆を見回しながらが尋ねる。僅かな沈黙の後、正面にいる空目が口を開いた。
「お前が此処に来た理由、そしてお前が『何者』かという事。突き詰めればその二つだな」
「いきなり本題からだね。けれど、私が話せる事はそう多くはないよ?」
がそう答えると俊也と亜紀はこちらを睨みつけてきた。
「それで構わない」
笑いを堪えながらが口を開く。
「わかった。…とりあえず、おそらく皆が疑問に思っている事から。
 空目くんと村神君は以前十叶先輩に遭った時に聞いたかもしれないけれど、私は"魔術師"だよ。此処には探し物をね」
他に質問は?と尋ねると亜紀が名乗りをあげた。
「あの時私に言った、あの意味は何?」
「…あぁ、あれね」
「あの時って?」
話が見えないのか代表して武巳が尋ねる。
そういえば、これは亜紀としか知らないやり取りだ。
それに気付いたのか亜紀が簡単に説明をする。
「…恭の字達が来る少し前、に言われたんだよ。『アレの原因の一部は、私にもある』とね。…どういう事か説明してくれる?」
亜紀の質問には頭を巡らす。

(さて、なんて説明しようか)

はぐらかせばいいのだろうが、困った事に此処にいる全員感がよい。下手に説明すればややこしい事になるだろう。

それに、と思考する。

これは私の問題だ。彼らには関係ないこと。

「…私には探しているモノがあると言ったよね?その一つが、亜紀に付加されてしまっていたんだ。 …あれは活性化すると手がつけられなくなるから、亜紀に付加されてると判った時は本当に困った」
友人には傷ついてほしくないからね。とは呟く。
「だから機を待っていた。その間、亜紀には辛い思いをさせていたから……本当にごめん」
しん、と部室内が静かになる。
「……別に。いいよ。謝らなくて」
「ん。ありがとう」









、一つ聞いてもいいか?」
とりあえず話し合いはお開きになり、解散した所で空目に呼び止められる。 皆は訝し気に二人を見遣るも、次の授業の為出ていかざるを得なかった。 付け加えるならば二人は次は自習な為実質的には何もないので好都合ともいえる。
気配が遠退くのを確認し、は空目に尋ねた。
「なに、空目くん?」
「何故お前は此処へ来た?」
「?だから探しモノを−…」
「違う。『此処』へ来た理由だ」
視線が絡まる。しばしの沈黙の後、折れたのはの方だった。
「……不可抗力だよ。そもそも、あれが散らなければ私は此処にいない」
かつ、と部室を横切り、窓際に近寄る。
「…詳しく話を聞かせてくれないか」
空目の言葉に黙し、緩やかに溜息をつくとは振り返り空目に視線を戻した。
「……しかたない、かな。本当は誰にも話すつもりなかったのだけど、君にも知る権利はあるか」
一応、契約しているしね。と零し、とつとつとは話し始めた。
「全ては話せないけれど、さっき皆にも話した通り、私には探しているモノがある。君には言ったよね?私は異世界から来たと」
「ああ」
「此処に来たのは本当に不可抗力。私の伯父達がある人を召喚しようとした為」
「召喚?」
「そう。『異世界の創造主』を召喚しようとした」


愚かな愚かな伯父達。

あれは禁忌。神を超える存在を喚ぶなど。

超える力を欲する愚かな人の性。それにあの人達は捕われた。


「私達はそのニエだったらしい」
その言葉にあやめがびく、と小さく肩を震わした。
「ニエ…生贄の事か?」
「そう。私も気付かなかった。そして横槍を入れた結果、この世界に飛ばされたというわけ」
ふぅ、と長く溜息をつく。
「来た以上どうする事も出来なくてね。 それに術の残骸…私はそれを術式の片と言っているんだが、それが此処に散らばってしまったらしくてね。 だから私は此処に来た。 伯父達が実行したとはいえ、始末はつけないといけないからね」
これで全部だよ。とは近くまで来ていた空目を見上げる。
深い深い深海を思わせる瞳が空目を映し出す。
「片はまだどこかにある。私はそれを探す。もちろん、君には協力するよ。…ただ、時と場合によってはあちらを優先するが……それでもいい?」
「………構わん」
「なら改めて、これからよろしく。"人界の魔王陛下"?」
「ああ」
空目が微かに微笑った。
それを見て、ひとつだけ、の鼓動が高鳴る。
(……?)
余韻が静かに染み渡る感覚に心の中で戸惑う
何となく落ち着かない気分になりながら差し出された手をとったのだった。














呪いの物語はこれにて終幕です。夢主が来た理由はあれで全てじゃありませんよ?要約しただけです。
次は思わぬ人(?)が出てくる可能性有。





07/2/16 up