今思えば、それは必然だったのだろう。 私と彼の邂逅は。 薄暗い部屋の中、魔法陣の中央でが喚起の言葉を紡ぐ。 揺らぐのは蝋燭の灯。 呪力が巻き上がる。苦しい程の密度。 視えるのは界の扉。 鍵を開け解き放つ。 『我が声に応え、異界の者よ ―我は世界の平衡を望む者。 異界の魔術師、の命により、来たれ!!』 魔法陣から光が溢れ、膨大な呪力の風が渦を巻く。それが凝縮され、光が一瞬強くなった。 そして、現れたのは… 「おい、人間!てめえが呼び出したのかよ!」 赤い髪が特徴的な、少年だった。 「………えっと、失敗?」 いや、失敗ではないのだろう。姿は少年だが、悪魔特有の朱い羽と尻尾がそれを物語っている。 あまりの事にしばし呆然とする。 「おかしいな。術式は合ってる筈なんだけど…」 「おいっ」 「んー、どこがいけなかったんだ?」 「てめえ人間!話聞きやがれ!」 「うん?」 ぱっと顔を上げると、赤髪の少年と視線がかち合った。少年の目が驚いた様に見開く。 「?」 「お前、……か?」 名を呼ばれ驚く。だが瞬時に険しい目付きで悪魔を見遣る。 「……何故、君が私の名を知っている?」 「何故って……お前、覚えていないのか?」 「? 何の事だ?」 訳が分からないと顔をしかめる。そんなを見て悪魔は、微かな怒りと困惑と落胆がないまぜになったかの様な―言い換えれば何とも微妙な表情を浮かべた。 「…覚えてねぇんならいい」 拗ねた様なその物言いに首を傾げる。 一応は自身の記憶を漁るが、やはり目の前の悪魔とは面識はない。 「えーと、君の名前は…?」 「……………バルレルだ」 「ではバルレル、悪いが暫く私に付き合ってもらうよ」 そう言い、はバルレルの契約を早々と解いてしまった。 「…おい。なんでわざわざ契約を解く?」 「君と主従関係結ぶ為に喚んだわけじゃないからね。先程の様子じゃ、私には覚えはないが君と何らかの接点があったのだろう?なら信用するに値する」 「……変わんねぇのな」 「何か言ったか?」 「別に。お人よしだなと言っただけだ」 「賛辞として受け取っておくよ」 肩をすくめて淡く微笑う。 「よろしく、バルレル」 「………ケッ」 おそらくこの展開は誰も予想しなかったでしょうね。 サモンナイトに出てくるサプレスの悪魔のご登場です(笑) 元々出すことは決めてましたから。今後をお楽しみに。 07/4/7 up |