皆が寝静まった真夜中、がテラスにいると子供姿のバルレルが酒瓶片手に屋根から降りてきた。どうやらずっと上にいたらしい。

「…よかったのかよ。アイツラ泊めて」
「別に、これ位では揺るがんよ」
暫くどちらも沈黙する。囁くように、の声が風に流れる。

「…関わろうと思った事は、後悔していないのだがな…」
どうにも駄目だ。と自嘲気味に目を伏せる。珍しいとバルレルはを見上げた。
「不変を希う事は、いけない事なのかね」
「…?」
「………モノが、失いたくないものが増えそうで、ね」
何処か彼方を懐かしそうに、愛おしそうに見つめながらその言葉を囁いた。


私には、    がいれば、それだけでいいのに      と。
















先に戻っている。とが中に入るのを見届け、バルレルは空を見上げた。
「……成る程ナァ。道理で」
誰もいない空間でぽつりと云う。がバルレルを知らなかった理由が漸く判った気がする。
酒瓶に口をつけ一気に煽る。軽い酩酊感に揺れながら知らずため息がでる。ダメだ、酒がまずくなる。
「…ったく、コイツも意のままかよ。腹立つ」




何処まで、は判っているのだろうか。



これから、何が起こるのか識っているのだろうか。



全て終わった時、






「…さぞ複雑だったろーなァ?『鍵守』」

あの時は既にああだった彼女に向けて、嗤った。





















08/01/18 up