あそぼう ? あそ ぼう? いっしょに ずっと ぼくと遊ぼう? ひたり、ひたりと足音が闇の奥から響いてくる。 それをは何をするでもなく、ぼんやりと聴いていた。 こちらへ近づいてきてる事は空気の動きでとうに判っていた。口元に笑みを浮かべながら近づいてくる目隠しをした小さな少年。 彼が触れられる位近づいた瞬間、は閉じていた目を開いた。 その途端、世界は闇から光へと切り替わりのぼやけた視界には全身黒装束を身に纏った魔王陛下こと、空目の顔が映った。 「………何か用?空目くん」 「特にはないな」 「そう。だったらこの顔の近さは何?」 ちなみに今のと空目の距離は5pあるかないか。お互いの吐息がかかる距離だったりする。 時刻は2限の中程。二人は部室で思い思いの事をしていた。というのも偶然にも受けるはずだった授業が休講になってしまった為だ。突然の事でこればかりはどうしようもなく、こうして今に至るというわけだ。 空目に離れてもらい、はこめかみを軽く伸ばす。彼と少し離れたところではあやめが所在無さ気に佇んでいた。このやり取りも夏休みが開けてからは久々だ。 「匂いがしたと思ったんだがな」 「…匂い?」 空目の呟きに軽く眉を上げて聞き返す。 「湖水、いや……」 何だろうな。と呟かれ、私に聞かないでと呆れて返す。 ついでに会話を続ける。 「…朝の事なんだけど」 「『コックリさん』か」 「まだ二人から全部を聞いたわけじゃないんだけどね…」 気になるのか。と空目に問われ、逡巡した後、は頷く。 「一般人がコックリさんをやった所で何も起きない。出ても低級霊だしね。ただ…」 視線で促され、とつと呟く様に言う。 「やり方が、気になってね……」 ひたひたと、歩みよる、音。 「触媒は、誰だろうねえ…………?」 くすくすと響く、幼い、声。 そろそろ、限界なのかもしれない あの時、 見ていた、から。 私を 髪の長い少女の手を引きながら こちらに気付いた …気付かせないようにしてたのに 私を見て おさない、少年が 笑った。 「やっと、あえた」 その顔が、誰かと一瞬重なった気がした。 「……もう少ししたら、私は”あちら”を優先する」 「俺達が出来る事は、ないんだな?」 空目の言葉にこくりと頷き、は微笑う。 「うん。君達には何も出来ない。これは私の役目だから…」 「…無茶はするな」 「それこそ無理だよ。無理を通してでもやる。 片割れが、望む限りね」 「片割れ…?」 そう、片割れ。と空目に言葉を返す。 そして椅子から立ち上がり、くるりと振り向く。歌い上げるようには言葉を紡ぎ続ける。 「私の片割れ、妹が力を望むなら私は喜んで解放させるの。 その力はあの娘の扉の鍵となるから 私はずっと、その日を待っていた。 だから、」 だから、私は。と陶酔する様に囁く。愛おしげに、慈しむように、言葉を乗せる。 「だから、何が何でも無理を通す。無茶を通すわ。 あの娘の願いは私の祈り。 私の願いは、たった一つだけだもの―――――――――――」 目隠しの章、開幕です。 08/01/19 up |