あれから1日が経った。
会議室に集まった達は多絵の状態を芳賀から聞いた後、あの時何が起きたのか武巳から事情を聞く事となった。
達がドアを破った時は、既に残滓すら残っていなかったからだ。空目いわく、破った瞬間家中に広がっていた『異界』の匂いは一瞬にして消え去ったらしい。
稜子は気を失っていた為武巳の記憶が唯一に近い証言だ。

「…………」

武巳は自分の見た”そうじさま”に始まり、多絵を見つけた時の事、あの『異界』の景色の事、狂う様に話す多絵の様子。
”鈴”の事は伏せた。
それ以外の事は話すと、”そうじさま”と接触しながら助かった武巳は、恐らく助かったのだろうと解釈された。
けれど皆にも言っていない事が二つ、あった。
一つは武巳が最初に”そうじさま”に”感染”していたという可能性。

そしてもう一つは――――






甲高い叫びと笑い声が混ざり合い中、突如ぱしんっ、と音が鳴った。遅れて頭の中でなんだ?と武巳が思うと同時に掴まれていた感触が離れる。

『ダメだよ、たとえもう一人のボクたちでもだーめ』

くすくすと無邪気な幼い声が聞こえる。

(………何、が?…)

『おねーさんのお友達だもん。このおにーさんたちはあげないよ』

そろそろと視線を声の方に向ける。

「……………………!」

白い布を首元に巻いた幼い少年がベッドの端に座っていた。





その事は黒服にも空目達にも、言えなかった。
怖かったが誰にも話せなかった。
机の下で武巳は震える手を握りしめる。





いつか聞いた少年の笑い声が、頭の中で響いていた。



















08/09/30 up