こっちです。というあやめの言葉に導かれながらは歩く。ちなみにユッカにはひと足先に家に戻ってもらった。
ふと、家の帰路と同じことに気付く。
「あの、此処です」
「……成る程ね」
空目の家はの家と数分の距離だった。

「で、来たよ?」
用件は何?と空目に聞く。
「さっき近藤から連絡があったんだがどうも要領が得なくてな」
「それで私なのか…」
あやめに出されたお茶を飲みながらが呟く。
「…ってちょっと待て。明日でもいいじゃないこれ」
「家の様子を話してくれるか?」
「(無視したな…)…んー、そうだな…」
気配の事、獣の匂いの事、亜紀の怪我の事をかい摘まんで話す。
「後はどの子が召喚されるかだね」
「判らないのか?」
「妖精も精霊も神も悪魔もいるんだよ?どんだけいると思ってるの」
(まあゲーティアだとある程度絞られるけど)
とは思ったがあえて言わないでおく。確証のない事だからあまり言いたくはない。
話せる事は話したので、何か解ったら連絡してくれと言い空目宅を後にした。





「ユッカ。うん、ただいま」
足元に擦り寄ってきたユッカを抱き上げリビングに向かう。
にぁーぅ
ぴくん、とユッカは頭を持ち上げてある方向に向ける。
それは等身大の鏡だった。
何処かアンティークを思わせる意匠を施した造り。
その鏡がぼぅっと光っていたのだ。
が鏡にそっと触れると、鏡に映ったのはではなく、長い黒髪の、深緑の瞳をもつと同じ位の少女だった。
「紀伊奈…」
『久しぶりだね、。そっちの生活には慣れた?』
紀伊奈と呼ばれた少女が笑いかける。
彼女はの元いた世界の友人である。とは違い、魔術師ではないがその分野においては群を抜いている。
…もっとも、それは彼女の素性が大きく関わっているのだが。
この鏡も紀伊奈が通信用の術式を施してくれたものだった。
「上々。と言いたいけどちょっとね」
『あれま。まぁなら大丈夫だと思うけど』
「まあね。……それより、あの子は?」
『それがやっぱり異世界に飛ばされたみたい。―――かつて"魂の楽園"と呼ばれていた世界に』
「楽園の…?」
が軽く目を見開く。
『彼女が来たことにより、止まっていた歯車が動き出したよ』
「歯車がか−」
あ、そうそう。と紀伊奈がぽむっと手を打つ。
達を贄にした輩はかるーく制裁しておいたからv』
うふふっと笑う紀伊奈に苦笑する
「ごめん、迷惑をかけた。仕事はまだあったんでしょう?」
『まあね。管轄外だったけど達の事の方が心配だったもの』
姉さんも心配していた。と紀伊奈が苦笑した。
『それで、術式の片は全部見つかった?』
「いや…」

そう。今回がこの世界に来てしまった術式。
それが片となって散り散りになってしまったのだ。
現に、亜紀からもその片が感じられる。がそれを回収しない限り帰還することは出来ないだろう。
もっとも亜紀を助けるのが第一だけど。
『そっか…こちらでも調べとくね』
「本当にごめん」
何いってるの。貴女らしくない。と親友が笑う。
もそっちで頑張って』
「うん」
にこりと笑い紀伊奈は姿を消した。
「扉が開く、か−…」
忙しくなりそうだ。とユッカを撫でる。
「もうすぐあの子が目覚めるね、ユッカ」
誰に言うともなくが呟く。

「私の”鍵守”の役目も近いかな」



大切な大切な私の片割れ。



貴女は今何をしているの−?













色々と謎を織り込んでみました。いかがだったでしょうか?
というかあんまり空目宅のついて書いてないのに今更気づいたり。







06/11/18 up