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薄暗い廊下をぞろぞろと歩く。あの後、見回りをしていた警備員が空目達を見つけ、こうして職員室へと連行されている次第だ。 だが待っていたのは人一人いない職員室だった。 「連れてきました」 戸惑う俊也達に構わず警備員は言うと、その場で背後から空目の首根っこを押さえた。 余りに自然な動作で、そして唐突だったので理解が遅れてしまった。 動かないでください。と間髪入れずに場にそぐわない男の柔和な声が聞こえた。 沙羅は視線だけでどういう事か、と空目に尋ねたが、彼は奥の衝立を睨んだまま黙したままだ。 「……や、どうも」 「”機関”―――か」 空目が抑揚のない声で呟く。…それが、彼等の存在を的確に現す言葉だった。 男は芳賀と名乗り、空目達を見回し、沙羅の所で視線が止まった。 「ところで、そちらのお嬢さんは?」 話しを向けられて沙羅は一瞬間を置いて、私ですか?と聞き返した。 「ええ。お名前は?」 「私は先日転校してきた久樹といいます。……あの、私、席を外してた方がよかったですか…?」 あくまで穏やかに、けれど少しの不安を覗かして。 何も知らないのだという様に演じる。 相手に隙入る間を与えないように。 私という存在を知らしめないように。 (機関、ね。余り関わり合いたくはないな…) どうやらあちらは、沙羅の事をこの件には関係ないだろうと判断したようだった。 「…そうですね。あなたさえよければ暫く外してもらいましょう。皆さんもそれでよろしいですか?」 「かまわん」 俊也が何かを言おうとして空目がそれを制す。 「ええ。君達との話が終わればまた会わせてあげましょう」 芳賀の背後にいた一人が沙羅を連れて他の部屋に案内する。 「――さて。君が現代の”仙童”、空目恭一君ですね?」 その声を聞きながら沙羅は職員室を出た。 「それで、どうだったの?」 芳賀達が帰った後、沙羅は空目達と合流した。 「沙羅ちゃん!」 「私は大丈夫。あぁ、さっきはありがとう、空目くん。合わせてくれて」 その言葉に漸く、俊也は理解した。 「空目、お前…」 「この方が都合がいいからな」 「…その分、君達とは別行動になるけどね」 「えっと、どういうことだ?」 「彼等は私の事、無関係だと思ってるから」 首を捻る武巳に、念には念をいれてね。と沙羅が告げる。 そしてこれからどうするかと言う話をしようとした所で、空目が口を開いた。 「済まないが先に行っててくれ」 「え…いいけど、陛下は?」 「久樹と話がある」 「空目?」 訝し気な俊也にすぐ追い付くといってあやめにも先に行かせる。 武巳達の気配が遠くへ行ったのを確認した後、沙羅はゆっくりと口を開いた。 「空目くん…一体どういうつもり?」 「久樹、俺の言葉を覚えているか」 「…"お前がほしい"、でしょ?」 忘れたかったけど覚えてるわよ。と苦々しい口調で微笑いながら沙羅が言う。 「ああ。力を貸してほしい」 空目の言葉に目を伏せ、開く。 「―――私と『契約』を?」 「そうだ」 「何故?」 「俺に力を貸してほしい。呪いのFAXを止める為にもな」 「私には探している物がある。それと平行しても?」 「構わん」 「…私が『異世界から来た存在』でも?」 「匂いが違うのはとうに知っていた」 「…………そう」 魔王陛下と魔術師の契約、ね。 「いいよ。私は貴方に力を貸そう。"魔術師"久樹沙羅の名において」 「契約成立だな」 「ええ。…ああ、空目くん、これを渡しておくよ」 チャリ、と金属の擦れる音がした。沙羅が手にしたものは不思議な蒼い石のついたブレスレットだった。 「それはなんだ?」 「お守り。大低のことはそれで防げる」 ブレスレットについている蒼い石は亜紀に渡した薬の容器に装飾されていたのと同じものだ。 「それじゃ、私は別行動ね」 また後で。と告げて空目を見送った。 暫く、空目が消えていった方向を眺めていた沙羅だったが、誰に言うともなく呟いた。 「さて、そろそろ出て来たらどう?闇のヒト」 沙羅のその言葉にざわり、と彼女の背後で闇がうごめいた。 一気に3話分をup。 最後は、皆さん誰かわかりますよね?(笑) 06/11/18 up |