さくりさくりと下草を掻き分けながらは木々を擦り抜ける。数日前、空目達が通って来た道である。薄霧と朝露が足元を僅かに濡らした。

さああぁぁ

突如視界が広がる。
「…流石に2,3日じゃ代わり映えもしないか」
ぐるりと周りを見渡して小さくは呟いた。
亜紀の『狗』が消滅した場所。うっすらと重みを感じる様な空気は相変わらずだ。
がわざわざ此処に赴いた理由は場の浄化に外ならない。あの時、あやめの詩によって全て燃えたのだが、まあ念には念を入れて。
「さて、始めますか」
そう言うと、肩にかけていたバックから布製の小さな袋を取り出した。 バックを空き地の中央に置き、その足で正面の樹の根本−亜紀がうずくまっていた場所である−に袋から取り出した物を一つ、そこに置く。 バックを中心として円を描く様に等間隔に一つ一つ、全部で6つ配置させた。
高みから見れば、それは六方星であると気付いただろう。
円の中央に戻りは取り出した短剣をトス、と地面に突き刺した。すると一瞬、六方星の魔術陣が浮かび、霧散する。 すると先程まで重かった空気がなくなったのを肌で感じた。
「…浄化終了」
簡略だけど仕方ないか。と肩をすくめ、短剣を抜き鞘に戻す。そして立ち上がろうとして、
グ ラ リ
「……っ!?」
視界がぐにゃりと歪む。

モノクロの視界

凄まじい程のノイズ

まるでチャンネルの合っていないテレビを見ているような−−
それは学校の廊下だった。
対峙するのは亜紀と知らない生徒。ノイズが走り顔がよく見えない。
(−−な、に…?)
「−−−、−−た−?−−の−を」
生徒が何かを言う。役者の様に大袈裟な動作で何かを語る。
それにつれて亜紀の空気が変わるのがわかった。

転じる黒

異界

あちらから来るソレ

ノイズ

歪んだ歪んだソレ

ああこれは−−………

ぱちん
「っ!」
風船の割れる様な音では意識を取り戻した。見回して気配を研ぎ澄ませるものの、もう先程の様な感覚はない。
暫くの間、息を詰めていたがゆるゆると緊張をほどき、は目を伏せた。
(これは………未来だ)
何故、それが未来だと思ったのかはわからない。
だが漠然とした確信はあった。

アレは、これから先に必ず起こるものだと。

く、と口元が皮肉気に上がる。
「私に、何をさせる気なのかな?詠子」
この場にいない彼女に向けて囁く。
余りにも可笑しくてくすくすとは微笑う。
どうやら私も、魔女の物語に立つことになるらしい。
「なんて皮肉。なんて滑稽。…いいわ。受けてたとうじゃない」



貴女は私を踊らせることが出来るかしら?














時間枠的には呪いの物語の最終話の前です。





07/03/29 up