一つ、二つと灯がともる。夕闇に淡く光るそれ。されどそれは人のおこしたものではなく、さながら蛍の光の様。 「しっかし、今回は運がよかったな」 ギンコが蟲煙草をくゆらせながら呟く。全くだ。とその言葉に頷きながらは淡い光を仰ぎ見た。 「まさか灯蛍が見られるとはな」 -灯舞う空- 灯蛍とは 数年に一度しか見れない蟲のことである。光脈筋の傍で、また清浄な空気のある土地にしか棲息していない為見つけるのはたやすくない。 何より… 「この蟲は、光るために命を燃やすからな」 「ほぉ、詳しいな」 「小さい頃、師に教えてもらった」 は光を掬うように手をかざす。まるで昔を懐かしむかのように。 『きれい…』 が物珍しさに光に手を伸ばそうとしたのを師は優しく諌めた。 『捕まえてはいかんよ、』 『何故?お師匠さま』 こんなにもきれいなのに。とが口を尖らすと優しく師は彼女の髪を撫でた。 『灯蛍は寿命が他の蟲より極端に短いんじゃよ。普段は外に焦がれ地中深くにいるのじゃが、数年に一度出てくるんじゃ。 ただただ地上に焦がれて、身を焼いてもな。この光は、』 「この光は、彼等の命そのものなんだ。とね」 ふわり、ふわりと灯蛍の光が揺らぎ踊りながら舞い上がる。さながらそれは天へ還る星の光の様だとは思う。 「まるで天へ還るみたいだな」 その言葉には思わずギンコを振り仰ぐ。 「…何変な顔してんだ。お前は」 「いや…まさかギンコからそんな表現がでるとは思わなかった」 明日は雹が降るな。とが茶化すと頭を軽く打たれた。 「……何も叩くことはないだろうに」 「別にいいだろうが」 「よくない」 「…」 しばし睨み合うがなんだかお互いに馬鹿らしくなったのでさっさと切り上げ、また灯蛍の群れを見上げる。 その幻想的な景色は、色鮮やかに心に残るのだろうと思いを馳せながら。 --後書き-- ちなみにこの話を思いついたのは7月入る前日でした。 部活のときに なんか書きたいなーとか思っていたら学校帰りの駅のホームで落ちてきたんです。コレが。 夏ですし。もうすぐ七夕だし。てわけです。(意味不明な) |