「お馬鹿ーっ!」
ぺこんっ
痛い……何も叩く事はないじゃないか佳奈枝さん。(それもペンケースで!)
学ランさんこと、雲雀恭弥の名前を聞いて翌日。
お昼休みに何気なくその事を佳奈枝(名前で呼んでねと言われた)に話したら何故か叩かれた。

「ったー。何も叩くことはないかと…」
「うふふふふ…ちゃん?あたしが昨日なんて言ったか覚えてる?」
「(なんか怖い…)昨日?………あー風紀委員に関わるな?」
「そうね覚えてたんだねちゃんと。じゃあ聞くけど。なんで言った傍から関わってるのかなぁ?」
「…あの人、風紀委員なの?」
「学ラン来てるのは風紀委員だと思って」
「はぁ…じゃあ雲雀恭弥は?」
「風紀委員長」
「………マジで?」
どっと冷汗が流れるにマジですよと佳奈枝が神妙に頷く。
(と、いうことは夏休みのアレが初対面だったんだぁ雲雀恭弥と)
世の中は狭いなーと視線を遠くに飛ばす。現実逃避ともいう。………覚えてそうだなぁあっちも。
その時、

ピンポンパンポーン

『2−Aのさん、至急応接室に来て下さい』
「「………」」

ザワザワとしていた空気が一気に静まり返る。呆気にとられてるとぽん、と肩に手をのせられた。
「佳奈枝ちゃん……コレって、コレって!」
「ご愁傷様、ちゃん」
「そんな満面の笑みで言われても嬉しくないっ(泣)」
「大丈夫よ多分。…短い人生だったね」
「言ってること矛盾してるしー!」
「あはは。骨くらいは拾ってあげるからv
「佳奈枝ちゃん…楽しんでるでしょ」
「当たり。でも心配してるのは本当よ。気をつけてね?」
「うぅ…いってきます」
しんと不気味に静まりかえっている教室を泣く泣く後にして応接室へと向かっただった。







(入らなきゃ……駄目なんだよね?やっぱし……あぅぅ。いきなり攻撃とかないよね?)
はぁと溜息をつきながら意を決して小さく扉を叩いた。
「誰?」
「…です」
入ってと言われ、失礼しまーすと恐る恐るドアを開けた。部屋の中央に校長とかが使いそうなデスク。視線をずらすと黒革のソファに座った雲雀の姿があった。
「やあ、待ってたよ」
「(待っててほしくなかったけど…)で、用件はなんでしょうか風紀委員長さん?」
「雲雀恭弥」
「…雲雀くん」
「…」
「それとも学ランさんの方がいい?」
「…それは遠慮しとくよ」
「(勝った…!)それで用件って何…なんですか?」
勧められたソファに座りながら反対に座る雲雀に尋ねる。…あ、流石応接室だ。このソファすっごくふかふか。

「…君、風紀委員に入らないかい?」
「………はい?」
優雅に座る雲雀を思わず見つめる。なんかこの人何しても様になってるな−…じゃなくて。
「え…はぁ!?ちょっ、なんで私が!?」
「見てて面白いから」
「(それは褒め言葉じゃないよね!)…はぁ」
気の抜けた言葉を呟き、がどうやったら平穏にここを逃げ切れるだろうか悩んでいると、雲雀が立つのが気配でわかった。そして部屋の外の複数の気配も。

「…?(あれ、知った気配が混ざってる……?)」
「…誰か来たみたいだね」

廊下に複数の足音が近づく。誰の気配だったかなぁとも視線をドアの方に向けようとした、ら、雲雀の背中に遮られた。………何故に?


「へー。こんないい部屋があるとはねー」
ガチャ、とドアが開き黒髪短髪の生徒と銀髪…なのかな?の生徒が入ってきた。
…てか本当に見えないんだけど雲雀くん。
「君、誰?」
雲雀の睨みに短髪の少年が固まる。
「なんだあいつ?」
「獄寺、待て…」
「風紀委員長の前ではタバコ消してくれる?」
「(あ、なんかまともな事言ってる)」
「ま、どちらにせよただでは帰さないけど」
………うん。そういう人だったよねこの人は。遭遇してまだ3回目なのになー。
案の定、獄寺と呼ばれた生徒がキレて一歩前に踏み出す。と、

「消せ」

ビュッと風の切る音が聞こえタバコが床へと落ちた。
「…雲雀くん、一体どこからそのトンファー出したんですか…」
「…そんな事より、巻き添いくらいたくなかったら離れてれば?」
でないと君も同じ末路だけど。
その言葉に瞬時に雲雀達から距離をとる。…いや、誰だって我が身はかわいいものだと思うよ?

「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いだ。視界に入ると、  咬み殺したくなる」

殺気が徐々に膨れ上がる。
「へー。初めて入るよ応接室なんて」
(…ツナ君?)
そうか、この気配はツナ君だったんだ…。でもまずい。今入ってきたら…!
「まてツナ!!」
「ツナ君伏せてっ!」
「――――え?」
ツナが振り向こうとした瞬間、ガッと鈍い打撲音が響いた。

「まずは、1匹」

「ツナ君っ!?」
「のやろぉ!!ぶっ殺す!!」
獄寺がダイナマイトを投げようとした所を雲雀は紙一重で避け、トンファーで殴り飛ばす。

「2匹」

続いてトンファーを持ち直し、山本に攻撃を仕掛ける。
なんとか避けてたのだが、右手を庇ってる事を指摘され動揺した瞬間を雲雀が逃すはずもなく、腹を蹴り上げて壁側まで蹴り飛ばされた。

「3匹」

「う、わぁ…(やっぱかなり戦いなれてる)」
「…前にも思ったけど、平気なんだこういうの」
 こういうの、って云うのは人を傷つける事だろうか。そんなもの、私にとっては今更だ。
「平気じゃなかったらどうなってたのかなぁ私………ってそんな事より、ツナ君、大丈夫!?」
「…あー、いつつつ……」
「(よかった…)」
ほ、と安堵して胸をなでおろすと後ろから微妙に声の低くなった雲雀くんが声をかけてきた。
「…そいつと知り合い?」
「家が近所の子。それが何か?」
「……別に」
「(今の間はなんだ…)」
「えっ…さん!?」
「はーいですよ大丈夫かいツナ君?」
「……、そこどいてくれない?」
「い・や、です。とりあえずしまって…って言ってるそばからトンファー構えないでくださいってば!」
「煩いな。咬み殺すよ?」
「(それは確定事項なの−!?)っ、だから…!」

ズガンッ

「!」
突如、銃声が室内に響く。
何がおこって…?と思って振り返るとツナ君が額を撃たれていた。なんで、何処からと軌跡を追うと、黒くて小さな影が窓の方に掠めた。
「え……?」
「死ぬ気でおまえを倒す!!!」
「何それ?ギャグ?」
何故か制服を脱いだツナが雲雀に殴りかかる。が、いとも簡単に避けられトンファーで反撃され、ツナは地に伏せてしまった。
「さて、あとの2人も救急車にのせてもらえるぐらいグチャグチャにしなくちゃね」
「っ、雲雀くん後ろ!」
ゴッ、と鈍い音がした。ツナが立ち上がり雲雀の顔を殴ったのだ。その後スリッパでものすごーくよい音で雲雀の頭が叩かれた。
「(パカァンッて…!音が、ていうかあの雲雀くんに成し遂げちゃったツナ君て…!)」
可笑しいを通り越してむしろ笑えなさすぎてそれが怖い。というか何処から取り出してきたそのスリッパは。
「ねぇ…」

ゾクリ

雲雀から凄まじい殺気が放たれる。正直言って、怖い。けれどそれよりも…







(やば……、あてられそう)

ざわざわと気分が高揚してきそうになるのを必死で押さえる。ダメ。今は駄目だ。


(…だいじょうぶ、まだへいき。平気だ。だってあの人よりは、あの人たちよりは、ずっとずっと……)







「殺していい?」
「そこまでだ。やっぱつえーなおまえ」
「(リボーン君…)」
やはり先程見えたのはリボーン君だったか。気を反らされた腹いせに雲雀がリボーンにトンファーを向けるが、何食わぬ顔でそれを受け止めた。
「ワオ。すばらしいね君」
「おひらきだぞ」
手に持っているのは爆弾。
(まさか…!?)

ドカーンッ

リボーンの放った爆弾が応接室を襲った。







「ケホッ…あーもうリボーン君火力強すぎ」

軽く咳込みながらは立ち上がり辺りを見回す。爆発の割には被害はそれほどないので手加減してくれたのかなと勝手に納得した。先ほどの高揚感は未だ残るが、殺気がないのでするすると溶けていく。
えーと、雲雀くんは…窓際にいるか。
正直言って壁にもたれ掛かりながら外を見ている雲雀くんは様になってます。
ていうか…なんでこの人こんなに綺麗なんだ。至近距離だったのに煤が全然ついてない。(こっちは余波をまともにくらったのに…!)
制服についた汚れを払っていると、雲雀くんが視線を外に向けたまま話かけてきた。

「…あの赤ん坊、知り合いなの?」
「へ?うん。ツナ君の…近所の家に住んでるよ」
たまに遊びに来るしね。(私が作ったお菓子を食べに)
腕時計を見ればもうすぐ休み時間終わる頃だ。
ちら、と雲雀くんの方を見ると彼はまだ外に視線を向けたままだ。
…今のうちに帰ろう。うん。
「と、ゆーわけでそろそろ帰りま−「まだ返事聞いてないんだけど?」
くるりと扉に向かって歩き出そうとして、捕まった。(え、距離かなりあったよね!?)
「(ちっ)…暫く考える時間をください」
「却下。ちなみに断ったら咬み殺すから」
「それ選択肢ないじゃんかっ!」
もうすぐチャイムが鳴る。ここからクラスまでは少し遠い。………厄介な事に首を突っ込むのはかなり気が進まないのだけど。(溜息)
「…………わかりました。やらせていただきます。」
渋々と私が了承すると後ろで雲雀くんの笑う気配がした気がした。



遠い地のお父さんお母さんそしてお姉ちゃん。

私、は今後の身がかなり心配です。

















06/11/23
修正日 08/10/4