「妙だな・・・」
「何が?」
「静かすぎる」
神殿に着くなりリオンが言った。
「それに、人の気配がしないよね」
何かあったのかなとも呟く。
神殿は所々崩れかかっており、血のニオイのようなものが鼻を掠める。
正直言ってあまり嗅ぎたくないというのが本音。
知らず知らず眉をひそめる。
『みんなもう死んでいるかもしれないな』
頭に直接響くような声がした。
(スタン達じゃない声…?)
ではこの声がディムロス?
とすると私はソーディアンの声が聞こえるのか。
顔には出さないけど思わぬ発見には嬉しくなる。
「だからそれを確かめに来たのだろう」
リオンが行くぞと神殿の中に入った。
中に入ると静謐で思わず身震いした。
中にはやはり誰もいず、私達の足音だけが響く。
--と、ドンッと奥の方から物音が聞こえた。
「何?今の」
「だ、誰かそこにいるのですか?!」
どうやら声の主は扉の向こうにいるらしい。
開ける開けないの押し問答を
ルーティが扉の向こうの人と繰り広げている。
ふと何気なしに扉のやや上の見ると透明な球がふよふよ浮かんでいた。
「ねぇ、あれって何?」
とは球のようなものを指差す。
『スタン、結界が張られてるぞ』
「けっかい?」
ディムロスの言葉にスタンが聞き返す。
話をまとめると、結界のせいで扉が開かないらしいことが分かった。
「で?どうするのよ」
「おそらくどこかにクリスタルがあるはずだ」
「じゃあそれを壊せばいいのだな?」
マリーが嬉しそうに言う。
「では二手に別れるぞ」
そう言ってリオンは私の腕を引っ張った。
「え、ちょっと?」
「お前達は右側の道を行け」
そう言うとスタスタとの腕を引っ張って左側の道へ向かう。
なんであんたに指図されなきゃいけないのよ−!!
後ろからルーティの声がするがリオンは無視。
私はどうする事もできず、がんばってーと手を振ることしかできなかった。
「ちょっと−。あのリオンさーん?」
二手に別れたのはいい事だと思う。思うけどね?
「何故に私が選ばれたのか聞いてもよろしいですか?」
モンスターを倒しつつ,私はリオンに聞く。
「お前が一番怪しいからだ」
「うわ傷つくな−それ」
口では軽く言いつつも精神的に少しこたえた。
(流石に好きなキャラに言われるとなぁ…)
「それに怪しいと言われてもねぇ…。こっちはこの先不安だらけだっての」
「ほう?例えば?」
ぶつぶつ言ってるとモンスターを倒したリオンがこちらを見た。
「…なんで私は此処にいるのか。とか、これからどうすればいいのか。とか」
あ、危な…。思わず本当の事言いそうになったわ。
とりあえず突っ込まれる前に話題転換。
「で、これで全部なの?」
「らしいな」
(そいや左側って戦闘1回だけなんだっけ…)
あっけないねーとぼやいてたらさっさと行くぞと言われた。
「そういえばさ、スタンとルーティとリオンの持ってる剣って言葉話せるよね」
スタン達がまだ戻ってこなく、隙なのでさらりと言ってみることにした。
案の定、前を歩いてたリオンが驚いて振り向いた。
「お前、聞こえるのか?」
「お前じゃなくて」
名前くらいちゃんと呼んでください。後、そんなに驚いた顔しないでくださいそこの君。
『って事は僕の声も?』
頭に若いお兄さんっぽい声が響く。
「うん。名前は何て言うの?」
とりあえず知ってはいるけど聞いてみた。
『僕はシャルティエ!よろしくね』
「よろしく。シャルでいい?」
「お前ら…」
「何?リオン」
『どうかしましたか?坊ちゃん』
顔を上げるとリオンが何故か微妙な顔をしてた。
「私、変なこと言った?」
「…気にするな」
「いや気にするなと言われましても」
無茶苦茶気になるんですけど…?
何なのだ一体。
もう一度聞こうと口を開こうとしたら丁度、スタン達が戻ってきたので結局うやむやとなってしまった。
扉の向こうにいたのはアイルツという司教だった。
彼に案内され神の眼が安置されてる場所へ行く。
けれど、
「神の眼が、ない…」
「おいっ、これはどういう事だ」
「そんな…盗まれるだなんて!」
神の眼はすでにそこにはなく、人型の石像が佇んでいるだけだった。
(あれって…)
皆が混乱するなか、は一人石像に近付く。
「ねぇ、誰か石化解除の薬持ってない?」
「持ってるが、どうするんだ?」
マリーが尋ねるとがにこりと笑い、受け取ったパナシーアボトルを石像にかけた。
すると、
「私は一体…?」
「フィリア!」
アイルツがフィリアの名を呼ぶ。
「た、大変なんですっ!でもまさか大司祭様に限ってそんな…」
「えーと、フィリアさん落ち着いて、ね?何があったか、順に話してくれますか?」
「はい…」
フィリアの話を聞けば、大司祭だったグレバムが神の眼を持ち出したのだという。
「ようするに、神の眼を取り返さなきゃならないってことだよな」
『そうだ。神の眼はこの世界を滅ぼしかねないレンズだ』
「だがこれで、自由になれるのはまだ当分先になりそうだな」
「はぁ、仕方ないわね。乗り掛かった船だもん」
あの…。とフィリアが声を出す。
「なに?」
「あ、あの、私も一緒に連れていってください」
「敵のスパイを連れて歩く趣味はない」
「そんなっ」
フィリアの頼みをリオンがばっさりと切り捨てる。
「別にいいんじゃないのかな?」
ポツリと思わず呟く。
それに、とは言葉を続ける。
「グレバム知ってるのフィリアだけだと思うけど…」
「フィリア、あんたならグレバムを知ってるわよね?」
「え、ええ…」
ルーティの問いにフィリアが戸惑いがちに答える。
「ほらね?」
「フィリアも連れていこう。いいだろ?リオン」
「…仕方ない」
「だって。よかったね。フィリア」
「はい!ありがとうございます」
そう言って彼女は深くお辞儀をした。