一定に左右に揺れる感覚で意識が浮上する。
「ん……」
「、気がついたか?」
「…マリー?」
赤い髪が目の前で揺れ、背負われていたことにようやく気付いた。
「あんた、急に倒れるんだもの。びっくりしたわよ」
「大丈夫ですか?さん」
「うん。心配かけてごめんね」
もう大丈夫、とはマリーの背中から降りる。
「けど何でいきなり倒れたりしたんだ?」
「それは−…あまりの暑さに思わず」
「日射病ですか?」
「暑いの苦手だって言ってたもんな」
私だってまさか倒れるとは思わなかったよ、と苦笑する。
「大丈夫ならさっさとカルビオラへ行くぞ」
「ちょっと!はまだ本調子じゃ…」
「私は大丈夫だよ、ルーティ」
「けど…」
「それに、後少しなんでしょ?」
「大体1時間位ですわ」
尋ねるとフィリアが教えてくれた。
「なら、あっちで休むから大丈夫」
「あーもう、分かったわよ。そのかわりにちゃんと休みなさいよね!」
「うん。さ、行こう?」
(これでよかったのかな)
歩きながらは思う。
実の所、みんなに本当の事を言うべきなのか少し迷った。
エクスフィトのことを話してもよいかどうか。
(けどそうすると記憶喪失じゃないって分かるからなぁ)
みんなには悪いけど、もう少し黙っていることにする。
「やっと着いたな」
「いい?。ちゃんと宿屋で休んでなさいよ?」
「わかってるってば」
はスタン達と別れて先に宿屋に向かう。
「………トッシューのイベント見たかったな」
自分しかいない部屋でぽつりと呟く。
「ま、いいか。後でスタン達に聞こう」
ぽすっ
はベットに倒れ、仰向けになる。
「それにしても……エクスフィト、か」
白い空間で泣いていた彼女は、私のことを”あの方の血族”だと言っていた。
(あの方って……?)
一体誰の事を指しているのだろう。
(それに、私に力なんてないよ)
心の中でエクスフィトに言う。
「だって、あの時何も出来なかったんだから…」
呟いた言葉は誰にも届かず空気に溶けた。
しばらくするとスタン達が戻ってきた。
「あれ、フィリアは?」
「神殿に泊まって後で落ち合うんだ」
簡単に事のあらましを聞く。
「となると、夜に行くんだね」
「、無理しなくてもいいのよ?」
「さっきも言ったけど大丈夫だよ、私は」
ルーティは心配しすぎだよ。と苦笑する。
「それに休んでたから体も動かしたいし」
「…わかったわよ」
結構頑固なのね−って。
性分だから(笑)
そして夜、
神殿の裏口を開けてくれたフィリアと合流し、奥へと進む。
――と、前方から光がさした。
「やばっ見つかったわよ!」
「お前等はっ…ガッ」
神官が叫ぼうとすると、ドスっと鈍い音がして床に倒れた。
「あ、ねえ。こっちに礼拝堂があるよ」
おーいとが手招きする。
「今のは…がやったのか?」
「そうだよ。騒がれず出来るだけ速やかに。じゃないとまた来るよ?」
イザコザは避けたいからさ。とが言う。
「確かに一理あるな」
「でしょ?あ、これストラレイズ神殿と同じだね」
カチリと音がして隠し扉が開く。
おそらく設計者が同じだったのだろう。
なんなくと仕掛けを外して中に入った。
「この部屋…神の眼があったのと同じ作りじゃないか!」
皆が驚いていると、入口から複数の気配がしたかと思うと同時に部屋が光に満たされる。
「そこで何をしている!」
「やばっ」
神官たちは自分達こそが、神に選ばれた存在なのだと言った。
「貴様等ザコに用はない。グレバムはどこ行った!」
「さあ、知らんな。もっとも、知っていたとしても教えるつもりはないがな」
くくっと神官が笑う。
「我々は唯待つだけで良いのだ。グレバム様のモンスター集団が世界を支配してゆくのをな」
「モンスターって人の手で作ることが出来るもんなの?」
『レンズさえあればじゃが、そんな技術が現代にあるわけないんじゃ』
「…という事は昔はあったってことか」
クレメンテの言葉にが呟く。
(ああもぅ、何で醜いかな。こういう人達って)
特別な人なんていない。
勝手に選ばれたと思っているだけだ。
何故その事に気が付かないのだろう。
少しだけは彼らに同情する。
…本当にほんの少しなのだけど。
「なんにせよ、行き先は決まったな」
敵を全て倒した後、リオンが言う。
「そうね。さっさと行かない?ほら、も」
「え、あ、うん」
ルーティに腕を捕まれ、さっさと歩かされる。
「ルーティ?」
「また余計な事でも考えてたんでしょ」
「え…」
何で…。
顔に出てたわよ、思いっきり。とルーティが呆れた声を出す。
「あ−…じゃぁ…」
「フィリアとリオンは薄々気付いてたんじゃない?」
あっちゃあとは天を仰ぐ。
「…ご心配をおかけましました」
「別にいいわよー」
で、何考えてたの?
「ん−ちょっとね」
「何よそれ」
「ああいう大人にはなりたくないなって」
「シャル、気付いてたか?」
カルバレイス神殿からぞろぞろと外に出るさなか、リオンがシャルにしか聞こえない音量で問い掛けた。
『何にですか?』
「の足音だけほとんど聞こえなかったことだ」
目の前を歩くに目をやりながら。
スタン達の歩く音は神殿内に響いていた。
逆には全くと言っていいほど音を立てずに走っていたのだ。
初めて彼女と会ったときも、現れるまで気配すらなかった。
ソーディアンについても然り。
疑問という名の波紋は広がるばかりだ。
彼女は一体何者なのだろう…?
『……坊ちゃん、はですよ?』
マスターの感情の波に反応しシャルが言う。
「…わかってる」
「何がわかってるの?」
突如降りかかった声。
『!?』
「いつの間にお前…」
「え、今さっきだよ。遅いから何してるんだろうって」
それがどうかしたの?と首を傾げる。
「いや、何でもない」
「…まぁいいけど。早く行かないとルーティが痺れを切らすよ」
「ー、リオンー、さっさと来なさいっ!」
「ね?」
「…まったく、今が何時か分かっているのかあいつは」
ちなみに夜中である。
「んー、でもまぁルーティだし」
その一言で納得できるのが少し恐ろしい。
そう言うとくすくすとが笑った。
実を言うと、はリオン達の会話を聞いていた。
「…ごめんね」
誰に言うとでもなく呟く。
今はまだ、知らなくてもいい。
そう。今は、まだ――