その後ジョニーに導かれ、船に乗って城の城壁付近までやって来れた。 「で、どうやってあそこまで?」 「これさ」 そう言って取り出したのは… 「鉤縄?」 これをテラスに巻き付ければいいらしい。 「でもそれって誰がやるのよ。てかあんたって出来るの?」 「いんや?」 「じゃあどうすんのよ…」 「私がやろうか?」 「ん?」 「…できるのか?」 多分ね。とリオンに答えてジョニーから鉤縄を借りる。それにしても、此処にいる全員がコレ扱えなかったらどうやって侵入するつもりだったのかと考えなかったのだろうか。 (扱えるのが私でよかった…) 「ああ、大丈夫みたい」 ヒュンッ 「おい、?」 「ちょーっと頭上気をつけてねっと」 くるくると縄を回し、勢いがついた所で手を離す。勢いのついた縄は曲線を描いてテラスまで伸び上がった。 ヒュンッ ガシッ 鉤が引っ掛かり小さく削れる音がした。は軽く縄を引き、固定されたのを確認する。 「さ、見つからないうちに行こう」 そしてテラスにつき、モンスターを倒しながら先に進むと、鍵のかかっている部屋があった。これもががちゃがちゃと針金を使うと、ものの一分でカチャリと音がする。鍵の開いた証拠だ。 「ん、開いた。………ってみんなして何?珍しいものを見るみたいにして」 「あんた…本当にどこで覚えたのよ…」 「さあ?記憶ないし」 「記憶喪失なのか?お嬢ちゃん」 ええ、まあ…。とジョニーに答える。 「けど、変な気分だね。覚えていないのに身体が覚えているって感じは」 いけしゃあしゃあと答える。 正確には、幼い頃からこのような事は訓練してきた。というのが事実だが。 の母方の家系は忍を生業としてきたのである。だからある程度こういった道具は使い馴れているのだ。なのでにとっては造作もないことなのである。 その後モリュウ領の当主の妻、リアーナを助けだし、モンスターを倒しつつ先へ進むと今度は行き止まりの部屋だった。そして… 「…………オルガン?」 何故か中央に一段高くされてオルガンが設置されていた。部屋に不釣合いなそれを見てスタン達は眉をひそめる。 「どう思う?コレ」 「思うって聞かれても…何かの罠?とりあえず様子見て−…」 「ジョニーが嬉々として弾きに行ったんだけど」 いいの?と聞くと同時に軽快な音楽が辺りに響きだした。ちなみに曲はメヌエットだ。 「おい!勝手に弾くな」 「んー?」 リオンの言葉にジョニーが弾く手を止めるとバタンと奥の方から音がした。 「……ジョニー、もう一度弾いてくれる?」 また音が流れ出す。どうやら弾いている間だけ奥の扉が開く仕組みになっていたらしい。 「ではジョニーさんが弾くとして…」 「問題は誰が残るかだな」 「…私が残ろうか?」 「いいの?」 別に構わないよ。とルーティに返し皆を送り出した。 音が響いて壁に反響する。反響して収束し、木材に吸収されていった。響くのはジョニーの奏でる音とかすかな水音のみ。此処が敵の領域だとは思えないほど静かだな。と半ば他人事のようには思う。 「よかったのかい?残って」 「すぐ戻ってくると思うから」 あははと笑いながら縁に寄り掛かる。 「で?聞きたいことがあるんでしょう」 「…お見通しって訳か」 行動を共にしてからずっと、ジョニーは何かを言いたそうにしていた。それに気付かないではない。 「私が答えられるものなら答えるよ」 「んじゃ遠慮なく。お前さんは忍か?」 「うん(即答)」 のあっさりとした回答にジョニーは少し驚いたらしい。奏でられていた音が一瞬ブレた。 「隠さなくてよかったのかい?」 「まあジョニーだったら気付くと思ったしね」 「んじゃもう1つ。何故彼等と行動を共に?」 「それは秘密」 曲がメヌエットからノクターンに変わる。 「言えない事かい?」 「んー…違うけど言わない」 はこの物語を知っている。 これから何が起こるのかも。 …誰が死ぬのかも。 「結局、私が助けたいだけなんだよねぇ」 「何か言ったか?」 唯の独り言。と返しは天上を仰ぎ、静かに目を伏せて歌を紡いだ。 諦めた夢の破片 捨てずにしまっておいた 君の背中 離れてしまった距離 もう戻れないのだと心は泣いた 空は蒼く澄んでいて 私はまた涙を流す どうすれば止められる? どうすれば護れる? 絡み合った糸は終焉の淵に転がり落ちた 時は残酷にうつろい 緩やかに加速する 戻れない 戻ることは出来ない 雨の中佇むはぐれた子供 私は助けることが出来るだろうか……? |