カチリと音がし、歯車が軋む。それがゆっくりと動き出し仕掛けを解除させたことを知らせた。
「こんで次の道が開いたはずよね」
「そうですわね」
「何をしている。さっさと戻るぞ」
リオンが扉に手をかけながら振り返る。そんなリオンにルーティがぽつりと呟いた。
「…そういえばあんたってさ、の事どう思ってんの?」

どんがらがっしゃん

聞くからにものすごい音がして、思わずスタン達も首をすくめる。リオンが扉を開けようとして開けそこなって頭を打ち、 そして何故か上から金盥(かなだらい)が落ちてきたのだ。
「……なんでそんな事聞くんだ」
痛む頭を押さえながらリオンが呻く様に聞き返す。
「だっていたら出来ないじゃない。こんな話」
正論である為何も言えない。というかルーティに関して言えばすごく楽しそうだ。あとは分かってないのが二人と微苦笑してるのが一人。
「それに仲よさげに話してるしねー」
「別に話が合うだけだ」
『けどって不思議だと思うわ』
「アトワイト?」
『確かに。私達の存在を知ってもさほど驚かなかったしな』
『纏う空気も違うしのぉ』
アトワイトに次いでディムロスやクレメンテも参加する。
『で、結局坊ちゃんはの事どう思ってるんですか?』
「……どちらにせよ、あいつはあいつだろう」
付き合ってられん。と今度こそ扉を開けリオンはさっさと歩きだした。




(あいつの事をどう思っているか、か)
初めて会った時は変な奴だと思った。いきなり木の上から飛び降りてきたのだから。そしてそのまま今に至る。
とにかく不思議なのだ。という存在は。
まるで風の様な、空気の様な存在だから。
だからだろうか。時々彼女の気配がフッと消える時がある。いつかいなくなってしまうという不安が拭えない。彼女を留めておきたいと思うのは。


(…って何を考えているんだ僕は)
リオンは思考を振り払う様に頭を軽くふる。
此処は敵地なのだ。気をぬいてはいけない。…けれどルーティの言葉が頭から離れない。
はぁ。と溜息して、水音に混じってオルガンの音色が加わっているのに気付いた。追い付いて来た彼等にも音色が届いたらしい。
「これって…」
「ジョニーさんですわね」
「いや、他にも音…歌?が聞こえるぞ」
マリーの言う様にオルガンの音色と共に歌声らしきものが聞こえる。
「……………だ」
「え?」
「おそらくが歌っている」




夜空星見上げて祈る影佇みける


優しい歌に 蒼き夢落ちて溶けた


いつか道違えても また会えるようにと


この光消えてしまわぬように そっと包みこんだ



歌声は高く澄んでいて、聴く者を癒すようだった。



諦めた夢の破片 捨てずにしまっておいた


もう戻れないのだと心が泣いた


空は蒼く澄んでいて


私はまた涙を流す


どうすれば止められる?


どうすれば護れる?


絡み合った糸は終焉の淵に


希望は過去の軌跡


時は残酷に虚い


緩やかに加速した


戻れない 戻ることは出来ない


雨の中佇むはぐれた子供


私は助けることができるだろうか?




歌が終わった頃に二人が待つ部屋まで戻ってこれた。スタン達の気配に気づいたのか、がこちらを振り向く。
「あ、おかえり。大丈夫だった?」
「ああ」
そっか。とが微笑む。
「そんじゃ、バティスタを倒しに行くか」
ジョニーの掛け声に皆が頷いた。