あの後、バティスタと対峙し、無事フェイトさんを救出した。バティスタは、自らティアラを外して死を選んだ。 フィリアは、泣いていた。 自分の近しい人が死んでも、世界は廻り続ける。 それこそ、何事もなかったかのように。 解っていたこととはいえどうしてもあの時を思い出した。 「よお、可愛いお嬢さん」 「私はだってば」 フェイトさんを助けだした後、彼等の船に乗せてもらうことになった。行き先はティベリウス大王のいるトウケイ領だ。 夜風に吹かれながらが考え事をしていると先程の言葉と共にジョニーが声をかけてきた。あと何故かリオンも。呼び名はわかっててやってる為未だにそのままだ。二人が来たことではくるりと海から視線を外す。 「何か考え事か?」 「んー…そんな感じかな」 色々ありすぎたから。と言うと、そうか。とリオンが呟き先程の私の様に暗い海に視線を向ける。 「よければ話を聞くぜ?」 「……近しい人が死ぬのってやっぱり辛いよね」 「…そうだな」 「ね、ジョニーはエレノアさん…の為に?」 「そうさ」 フェイトさんを助けだした後、ジョニーから自分がシデンの三男だということ、エレノアさんの事を聞いた。 「俺はティベリウス大王の奴を許せない。エレノアを死に追い込んだあいつを」 「復讐か」 「そーいう事だ。悪ぃな、付き合わせちまって」 「…別に。僕等の目的は神の眼の奪還だからな」 「……ありがとよ」 夜の風は少し湿り気を帯びて達の髪をさらう。しばらくお互い何も言わずに過ごしていたが、不意にがぽつりと呟いた。 「ジョニーは復讐ってどう思う?」 「復讐?」 「うん。…何が残ると思う?」 「それは警告か?」 「特に意味はないんだけど…どちらにとってもいいよ」 ただ…とは言葉を紡ぐ。 「復讐しても…戻ってこないからさ」 フラッシュバックする。 思い出すのは血の色 彼の崩れ落ちる姿がやけにゆっくりで 自分が庇われた事を漸く理解した もっと私が強ければ あの人は死ななくてよかったのに。と 「お前さんにはあるのか?」 ジョニーの言葉に、は寂しそうに笑っただけだった。 剣と剣がぶつかる音、人の血、人あらざる血がそこかしこに飛び散る。その中をスタン達は走り回っていた。目指すはティベリウス大王の元だ。モンスターを倒しつつ先へ進むと12の扉のある部屋へとたどり着いた。 「何?これ」 「動物の絵があるな」 スタンの言う通り、扉の横に動物の絵が彫られていた。 「えっと…ジョニー。アクアヴェイルに時間を動物に当て嵌めてたりとかしてた?」 「ん?確かに昔はあったらしいが…」 そう言ってジョニーが扉に近づく。 「最初は……子だ」 軽く扉を押すのを見ては予想が間違っていなかったのを確信する。 「どういうことだ?」 「簡単なことさ。子、丑、寅、卯…昔此処じゃ時間を12の動物に例えていたんだ」 絡操さえ解れば簡単だった。ジョニーの言う順番に扉を開けていき次の部屋への扉が現れる。そこに目的の人物がいた。 「グレバム、見つけましたわ!」 「フィリアか!ちっ、ティベリウス!奴らを!」 グレバムのその言葉にティベリウス大王がスタン達の前に立ちはだかる。 「そこをどけ!」 「やれるものならやってみろ。刀の錆にしてくれるわ!」 戦いが始まった。 流石剣豪と言われただけはあり、スタン達が斬りかかるものの、いともたやすく跳ね返される。また他にも敵がいる為、必然的に戦力は分断され状況は悪化する一方だ。 はマリーとジョニーと共に雑魚を始末していたのだが、不意に殺気を感じ横に跳びのいた。一瞬前にいた場所には刀が振り下ろされ、床に亀裂が生じている。言うまでもなくティベリウス大王である。こちらが体勢を整える前に床を蹴りの首を狙う。 ガ、キィン−−! すんでのところでは両腕をクロスさせ双剣で防いだ。ギリギリと刃と刃が嫌な音を立てる。 「ほう……。その身のこなしといい…貴様、忍だな?」 「…だったら何?」 「貴様の存在意義はなんだ?忍とは主を持ってのものだろう」 「あんたには分からないでしょう、よっ」 バッと勢いをつけて後ろに跳びさすり攻撃を凪ぐ。 相手の傾いた身体にフィリアやルーティの晶術が降り注ぐ。更に間を置かずにスタンとリオン、雑魚を片付け終えたマリー達も参戦する。術の連打、技を出そうとしようものならからクナイやらが飛ぶ。 最後にジョニーの歌でティベリウス大王は地に片膝をつき、倒れた。 「おのれ…」 「お前のせいで…親父さんやエレノアは………己の代償を今その身に受けろ!」 「待って!グレバムは!?」 フィリアの言葉に皆が気付く。が既に遅くグレバムは飛行竜にのり遥か彼方に飛び去ってしまった。 皆が悔しそうにしていると、バサリとマントを翻しリオンがティベリウスに近づいた。 「おい、グレバムは何処に逃げた?」 「知らん…と言いたい所だがもはや俺には関係ない」 グレバムはファンダリアに向かったのだと言う。おそらく神の眼もそこにあるのだろう。 「フン。セインガルド侵攻等という夢物語に躍らされやかって」 リオンの言葉に嘲笑うかのようにティベリウスが言葉を吐き出す。 「違うな…これは近しい将来にやってくる現実だ」 暴走する悪魔を止められるか?セインガルドの少年剣士よ その言葉に血が上りリオンは剣を振り上げる。 「黙れ!」 ギンッ 「そこら辺で止めておこう?リオン」 「!」 振り下ろされかけた剣は彼女に阻まれる。何をする。とリオンが言う前にが言葉を紡ぐ。 「感情に流されすぎ。これの審判は彼等に任せよう?」 「けれど…こいつは…!」 「リオンが手を染める程の奴なの?こいつは」 ひた、とリオンを見据える。 「操り人形を切った所で、操り手を切れる訳じゃない。元凶を叩かなきゃいけないのは、リオンの方がよく知っているよね?」 「…ああ。その通りだよ」 ならいいや。とは剣を引く。リオンも剣を引き事の次第を見守っていたスタン達がほっとしたような表情をする。 「お前はどうするんだ、ジョニー。こいつを切るか?」 その言葉に少し目を見開くジョニーだったが、いいや。と首をふった。 「止めた。エレノアも望んじゃいねぇだろうしな」 その後、ティベリウスをフェイト達に引き渡し、ファンダリアまで船を出してくれた。港につき、も降りようとしているとジョニーに呼び止められた。 「ありがとな」 「私は得に何もしていないよ?」 そう言うとくしゃくしゃと頭を掻き回された。本当何がしたいんだろうと髪を直しながらが思っていると、黒く細長いワイヤー状の糸を貰った。 「……これは?」 「俺達からの餞別だ。暗器の一種だからお嬢ちゃんになら使いこなせるさ」 「じゃあ使わせてもらいます」 行くぞー。とスタンが皆に声をかけている。は彼等に軽くお辞儀をし、皆の方へ駆けていった。 |