あれから数日が過ぎ去った。
静かだなと思う。静かすぎて色々考えてしまうのだけれど。
「………選ぶ、か」
は誰に言うでも無く呟いた。それに反応して正面に座り、こちらも読書をしてい たフィリアがどうかしたんですか?と尋ねてくる。
「先程から頁が進んでないみたいですけど…」
そう。此処はストライレイズ神殿の知識の塔。フィリアについてきたは居候させ てもらっていた。
「ちょっとね。気にしないでいいよ」
そう言って苦笑する。
(言えないよねぇ……流石に。リオンに会いたくなったなどとは)
どこまで乙女思考なんだ私。
一人ツッコミをしつつ頭を軽く振り、手にしていた本に視線を落とす。が、やはり意識が 別の所にいってしまい中々文字が頭に入ってこない。
そして振り出しに戻る。

(選ぶのは…辛いな)

決めたのは私なのに。

そんな事をぼんやり思っていると。
「リオンさんの事ですか?」
思わず頬杖をついていた腕がガクッと滑った。
「…何でそこでリオン?」
フィリアがさらっと、まるで天気の話をする様な感じで言ってきた。じとりと見るとフィリアは 笑っている。
(……確信犯だ絶対)
さんの場合、そんな顔をする時は大低リオンさん絡みの事ですから」
「………………うわぁ」
どうやらばれていたらしい。
「…私、そんなに顔に出ていた?」
「ええ。私でよければ相談に乗りますが?」
その申し出にどうしようかと暫く視線をさ迷わせて、以前ふと思った事を口にした。
「…………もし、私がこの世界の人じゃないって言ったらどうする?」
「え…?」
突然の問い掛けにきょとんとするフィリア。
「ああ、言っとくけど例え話。記憶が戻らないのはそのせいかなって」
真実半分。嘘半分。けれど前々から聞きたかった言葉。
「…それでも」
「ん?」
「それでも、さんはさんです。私達の知っている大切な、仲間です」
「……そっか。ありがと」


ありがとう。その言葉をかけてくれて。


ありがとう。仲間だと言ってくれて。


少しくすぐったい気持ちになった。私も皆の事が大切だから。


「けれど、それとこれとは話は違いますからね?」
「むー…。上手く話反らせたと思ったんだけどな」
「私も成長しましたから」
「そだよねぇ…」
あはは。と笑いながら窓越しに空を見上げる。透き通る様な蒼い空。目を細めながら言っ た。おそらくフィリアは気付いているだろうから。
「リオンにね、会いたいと思ったの」
まだ、あれから何日も経ってないのにね。とは笑う。
「やはりさんは…」
「うん。けれど秘密ね?」
あの時にはもう気付いていた。やはり、私はリオンの事が好きなのだということ。
(本当、何でこんなに好きになっちゃったんだろうな)
「…もう、  がないのにな」
さん?」
それはどういう意味かと問おうとした時、バタバタと慌てたような神官の足音がこちらに 近づいて来た。
「どうかしましたか?」
「司祭様っあとさんも。至急、城に出向いてほしいとの事です!」
「城に?何かあったのですか?」
「それが、私共にも判らなくて…。ただ、至急出向くように、と」
困ったように言う神官。
分かりましたわ。とフィリアが立ち上がる。
そして何気なく目の前に座っていたを振り返ると、何故か悲しそうに顔を歪ませ ていた。まるで、こうなることを予測していたかの様に。 が、それも一瞬の事で瞬きをした後には普段の表情に戻っていた。
「フィリア、行こう?」
「え、ええ」
そして私達は知ることになる。