サァァァ 温かい雨が降りしきる中、はぼぅ、と佇んでいた。 目の前には自分の家。いつも見慣れている筈なのに今日はやけに懐かしかった。 「な、姉貴?!」 「…………?」 学校の帰りなのか、弟のが酷く驚いて泣きそうな表情でこちらに駆け寄ってくる。 「?どうかして…?」 「どうかしてじゃない!姉貴っ…一体、一体何処に行ってたんだよ!!それも一ヶ月も行方不明で!」 「一ヶ月、も?」 (私が……?) 覚えていない。最後にある記憶は学校から帰ろうとしていた事だけ。 「そーだよ!いきなし神隠しなんかあっ…てって……姉貴?」 は先程から握りしめてた物を見て、知らず知らずのうちに涙が頬を伝う。 その様子を不審に思ったが覗き込むと、 「イヤリング?」 それは片方だけのプレートイヤリングだった。 「どうしたんだ?これ」 「……分からないの」 「え?」 「分からないの。だって、気付いたのはついさっきでっ、」 込み上げてくるこの感情は何? 私は何を忘れている? ぽろぽろと零れ落ちる涙が雨に紛れ地に吸い込まれていく。 「分からないの…っ。とても、とても大切な事を忘れている気がするのに………!」 の悲痛な叫びに呼応するかのように雨は降り続けた。 後書き |