光にあたると淡い茶色になる髪 茶色がかった黒い瞳 忘れるわけがない あの時 彼女は目の前で消えたのに なぜ どうして それはシャルも同じだったらしく小さく息を呑む音がした。 唖然としてる両者が我に返ったのはの言葉だった。 「んじゃ俺は退散すっから後は頑張れ。アディオスー」 バタンッ ドアが閉まる音で時間が進み始めたが、それでも二人とも動けずにいた。 『…?』 シャルの言葉には僅かに口を開いて、閉じて。そしてふわりと、微笑った。 「―――久しぶり、って、言った方がいいのかな…リオン?」 「お前…なんで」 「色々と、ね。あったの。まさかリオンに会えると思わなかった」 それも、流れに乗る前に。 そう心の中で呟く。 だって驚いていないわけがない。必死に落ち着かせているだけで。 というか今すぐの所に乗り込んで行きたいとこだ。 会いたかった。会えるなら、と。 そう思ってこの世界に来たけれど。 (消えた手前、どんな顔して会えばいいかわかんないんだってば……!) 表面には出さずは苦悶する。今だけは逃げたを呪いたい。 「本当に、なのか?」 茫然としたリオンの言葉に苦笑する。そりゃ普通は驚くだろう。 「少なくとも皆の目の前から消えるのは金輪際やりたくないなぁとは思ってる」 『坊ちゃん、この反応やっぱりですよ』 肩を竦めながら答えるとくすりとシャルが笑ったのが聞こえた。リオンがため息をつく。 「…変わっていないな」 「それはリオンもね」 「、僕は…あの時、死んだはずだった」 リオンの口から語られる『その後』につ、と目を伏せる。 「…そう」 「驚かないんだな」 「君があの時と変わらないからもしかしたら。と思った」 「は…」 「ねぇ、リオン」 リオンの台詞を遮って言葉を紡ぐ。 「ごめんね。私は君達に言わなかった事があるの」 「何が……」 息を吸って、落ち着ける。 大丈夫という根拠はない。不安で仕方ないけれど、言わなければならない事だから。 「私が記憶喪失というのは嘘。本当はこの世界とは、違う世界から私は来た」 リオンは何も言わない。 「とある人が私をこの世界に喚んだの。けれど、制約があって…そして、私は一度この世界から消えた」 『だから、"ごめんね"だったんですね…』 「…知っていたの…本当は、全てを。けれど、言えなかった」 後悔はしてない。 選ばないことを選んだのは他でもない私だから。 けれど、 ごめんなさい 私は全てを知っていたのに ごめんなさい ただ見てる事しか出来なかった ごめん ごめんね リオン 話を終え、いたたまれなくなっては俯く。そんなを見ていたリオンはふ、と息をつくと彼女を抱き寄せた。 「!? っ、リオ…」 「馬鹿か、お前は」 閉口一番にそれはないと思います。 座っていたは頭を押さえつけられているのでリオンの表情は見えない。 「異世界がなんだ。はだろう。 …それに、あれはもう過ぎた事だ」 「リオン…」 に視線を合わせ言い放つ。 「僕は後悔してない」 「…リオン、ごめんね。ありがと」 そうが言うと何故か彼は不機嫌な顔になった。 「リオン?」 「……………名前」 小さい声だったがはっきりとには聞こえた。一瞬の間の後 は肩を震わせ笑いを堪えるように顔を背けた。 「おい…!」 「っあははは、や、だって…っ」 「お、前は……!」 「エミリオ」 ふわりと微笑みながら囁く。 「エミリオ…ありがとう」 その言葉を聞いてしまってはもう何も言えなかった。 『…そういえば、さっき一度この世界から消えたって言ってましたけど、が此処にいられるのはどうしてですか?』 「………………」 「?」 どーしよう。 微妙に固まった表情を引き攣らせながらは思考する。 いや、うん。別にやましいことはないんだけどね? 「…そればっかりはに許可必要かなぁ……」 あははと苦笑しながらが答えると、あいつか。とリオンが嫌そうに呟いた。 「、あいつは何者なんだ?」 「何者、ねぇ…」 うーんとが首を傾げる。 「会って4、5日しか経っていないからな。んー、でも信用は出来るよ」 『どういう事ですか?』 「は従姉の部下だからね」 それに、懐かしい。理由は判らないけれど。 「ところで、なんでリオンは此処に?」 『に連れてこられたんですよ』 「が?…ふぅん、そう。彼がねぇ…」 の思惑はにもわからない。優しいのだがどこか食えないのだ。 (けど、まぁ…) 「感謝、するべきなのかなぁ…」 「何か言ったか?」 「いえ何も。行こうか、の所に」 仮面をリオンに返し部屋を出る。軽く扉を叩きドアを開くと。 『マスタ−っ!!』 「うわっ、セドゥ」 ぽすっと軽い音がしてがセドゥを受け止める。 「おや、感動の再会は終わったのか?」 「うん。ありがとう、」 「どーいたしまして。…ところで、リオン・マグナス。お前さんの名はこれから何て呼べばいい?」 「あ、それは私も思った。リオン、どうすればいい?」 「…お前達」 「うん?」 「どうかした?」 息の合う二人に何でもないとため息をつき、ジューダスだと答える。 「…ジューダス、な。それ、お前さんが自分でつけたのか?」 「いや、カイルが、あの二人の息子がつけた」 (裏切り者って知ってて…なわけないよね。多分。本当に適当につけたんだろうなぁ) 二人の会話を聞きながらつらつらと思う。 Judas―裏切り者。 こちらの世界では英語は古代語なのだと、以前フィリアから教えてもらった。 解読できる者も少なく、普通の人であれば意味すら知らないだろうとも。 だとしたら、何故。と思う。 何故、カイルはその言葉を聞き知ったのだろうか。 (とりあえず、この名前を聞いて訝る人は――2人、かな) まぁ、どうにかなるだろう。 ちなみに目の前では何故か口喧嘩が始まっていた。(と言っても一方的にリオンが言い募ってがのらりくらりと避けてるというものなのだが) あ、リオンがシャルを抜いた。 |