ー」
「なに?
ジューダスと部屋で読書をしているとぽす、と頭に重みが加わった。言わずもなが、である。
ジューダスがを睨むが当の本人はどこ吹く風だ。ぼけぼけーっとした表情で呟く。
「確か今日なはずなんだよなー。も一緒に来るか?」
「あそっか、今日だっけ。今から行く?」
そだなー。とが返事をするとおい、とジューダスが訝し気な表情で尋ねてきた。
「お前達、何の話をしているんだ?」
きょとんと二人は顔を見合わせ、

「「知識の塔で借りた本の返却」」

と、いけしゃあしゃあと声を揃えてのたまった。
『相変わらず息ぴったりですねー』
「そうなんだよね。…なんでかな?」
「そりゃあれだ。思考回路が似通ってるっつーことで」
「なのかなー…。あ、リオンも行く?」
「……いい。此処にいる」
ため息と共に返され、そっかとが頷く。
「それじゃ、また後で」
行ってくるね。と手をふり、扉を開けた。外に出てからに尋ねる。
「それで、どうやって塔まで行くの?」
「裏口から」
フィリアから聞いといた。とがけらけら笑いながら先に進む。呆れながらそれに続く
「何て言うか…よく出来たね」
「まーな。つか、これ貸してくれたの彼女だから」
ついでに聞いたのだと前を歩きながら教えてくれた。





が言った裏口とは、街の外れにあった。
足元の石畳は長い間放置されていたのか一部が崩れ、 先に進めないようになっていた。 それでも二人が奥へ進んでいくと、アルファベットが彫られたタイルが敷き詰められているフロアに辿り着いた。
、これ分かるか」
「勿論。Destinyっと」
皮肉だよねぇと思わず呟きながら。
石版の上を踊るように踏んでいく。最後のタイルを踏むとゴゴッと重い音がし、扉が開いた。
「すっげぇ!」
「こらカイル!」
後ろから突然声がし、ばっと振り向くと金髪の少年と銀髪の青年がそこにいた。
が首を傾げながら尋ねる。
「あんた達、誰だ?」
「待ってくれ。俺達は怪しい者じゃないっ」
「いや、そーゆうと余計に怪しく見えるから」
思わず呆れて突っ込んでるとがパタパタと駆け寄って来た。
、こっちは準備整ったよ」
「ん?ああ、わかった」
「で、この人達は?」

知っててあえて聞くか。

まあそれがセオリーでしょ。

「俺はカイル!でこっちが…」
「美しいお嬢さん。私はロニと言う者です。貴女のお名前は?」
いつの間に距離を縮めたのか、ロニはの目の前にいた。ちゃっかり手まで握って。
「え、あ。ですが」
さんと言うのですか。なんて素敵な響きなのだろう!」
「…それはどーも」
、棒読み棒読み」
苦笑しているとカイルが声をかけてきた。
「ねぇ、そっちのお兄さんは?」
「俺はだ」
「よろしく!そういえば、って嘆きの天使と同じ名前なんだね!」
「嘆きの天使?」
カイルの発言にが聞き返す。ちらりと見遣ると、も知らない。と小さく首をふる。
「知らないのか?嘆きの天使ってのは、先の騒乱の英雄スタン達と共に戦い、唯一人、裏切り者リオンの為に涙を流し、天へと還ったと言われているんだ」
「…へえ。よく知ってるな」
「まあ、こいつの親が二人とも英雄だからな」
ロニの説明にと視線をかわす。
(お前そんな事してたのか?)
(いや、泣いたことは泣いたけど…)
まさかそんな解釈をされていたとは。
「悲しんでたのは寧ろあの人達なのに…」
「?何か言った?」
何でもない。と首をふる。

「それはそうと、二人はなんで此処に?」
「俺等は本を返しに。そーいうカイル達は?」
「あぁっ!そうだよ!早くあの子を見つけなきゃっ。ねぇ、達は見なかった!?」
「すとーっぷ」
「いたっ?!」
べしっとカイルの頭にが手刀を落とす。
「カイル、どんな女の子なのか言ってくれなきゃ流石に判らないよ?」
苦笑しながらが言うとごめん。と恥ずかしそうに笑った。
「えっとね、栗色の髪で、肌が白くて、薄桃色の服を来た女の子!あのね、凄いんだ。レンズの中から出てきたんだよ!」
「そうなの?」
立ち話だとモンスターに遭う恐れがあるので先に進みながら会話する。
「うん!『あなたは英雄じゃない』って言われちゃったけど、もしかしたら未来の俺が彼女の英雄かもしんないからさ!」
「…超ポジティブな」
「なんか小犬みたいだねぇ…」
カイル達には聞こえないように会話する。
「だから俺、英雄になるんだ!父さん達みたいな英雄に!」

「そっか。頑張って、と言いたいとこだけど…君は、耐えられるかな?」

「……え?」
不意に紡がれた言葉にきょとんとカイルがを見る。にこにこと微笑いながらは続ける。
「何かを成し遂げるには、それ相応の代償が必要だから。[全て]を掬い取るなんて、そんな事出来るわけないから」
…?」
「と言っても、これは私の持論だからあんまり気にしないで」
「う、うん」
「おーい。そろそろ出るぞ」
わかった。との呼びかけに答える。
外に出ると光が眩しかった。光に慣れるため軽く目を瞬かせていると、隣にいたはずのカイルが突然走りだした。
「カイル?」
と顔を見合わせ、とりあえず追いかける。その先には大聖堂がそびえ立っていた。