にとって船旅は以前に何回か体験した為あまり感慨はなかったが、どうやらこの二人は違ったらしい。 「海だーっ、船だーっ!」 「母なる海よ!美女が俺を待っている!」 「…………」 「元気だねぇ、二人は」 「カイルらしいわよね」 「ロニは大人げないよね」 「俺と同年のはずなんだけどな。…賭けるか。ナンパ成功するか」 「あ、じゃあ全敗に1000ガルド」 「あたしも」 「馬鹿か。そもそも賭けにならんだろう」 「そりゃそうだ」 「おまえらなぁ!」 『だって本当のことだろ(でしょ)』 「みんなーっ、早く行こう!」 そんな会話をしつつ船に乗り込む。出港後、案の定カイルはリアラと共に船の探検に行き、 ロニは美女を求め(おそらく全滅だろうが)、ジューダスは一人になりたいと出て行った。 船室にはとの二人しかいないので聞かれることはない。それ幸いに今後の事について話を交える。 「皆行っちゃったねぇ…そういえば、大体どの位でスノーフリアに着くの?」 「んー?ああ、約10日だとさ。今回は晴れてるらしいから」 「そっか」 「ところがそうは行かないのが常というもので」 「だね。10日ぐらいとすると、魔の領域に入るのはその1、2日前ってところか」 思ったより長いね。とは呟く。 「とりあえず、今日は船内でも散策してくるかな」 「俺は此処で本でも読んでる。…ちなみに」 「?」 首を傾げるにぱら、と本を捲りながらが口の端を上げて続けた。 「人気がないのは横のデッキだ。リオンに会ったら伝えとけ」 「あはは…うん。判った。会ったら伝えとくね」 「おー」 行ってくると告げると、手をひらひらと返してくれた。 それにしても何処にいるのだろうか。人気のない場所から探してみるも、あの目立った黒い影は見つからない。 「…すれ違いになったかな」 駄目元で他の乗客や船員に聞きながら行くとようやく見つける事ができた。 ただし、滅多に見られない光景で。 「……これは、また」 『うわぁ逆ナンされてるー』 「…船旅って結構暇だもんねぇ。この場合、どちらを称賛すべきなのかな」 『アイツとナンパしてる女の人と?』 「うん」 『……………マスター』 「なに?」 『もしかして妬いてるの?』 「……まさか。というかセドゥ。なんでそんなに嫌そうに言うかな」 小さな声でやり取りをしながら、やや上に浮かぶセドゥに問い掛ける。 『だってアイツ嫌いだし』 「…私にはそれが解らないんだけどね。ま、楽しめたからそろそろ助けに行こうか……」 な。と言い終える前にはた、と仮面越しの視線と合ってしまった。 みるみる驚きで目を見開くジューダスにあちゃあと苦笑しながら軽く手をふると、女性を振り切って些か速い足取りでこちらに向かってきた。 「ジューダス、うわっ」 「いいから来い」 いつかの様に腕を引っ張られ、そのまま着いていく形になる。ちらりと振り返ると先程の女性は逆に今度はロニにナンパされていた。 角を曲がった所で漸く速度を緩める。 「…もしかして私は逃げの口実?」 「………」 「図星みたいだね。…ま、いいけど」 どうせ行こうと思っていたから手間がはぶけたし。と続けながら隣に並ぶ。 「が横のデッキには余り人が来ないって言ってたけど行く?」 「…ああ」 「そういえばさ、こうして船旅でゆっくり出来るのって始めてだよね?」 の言った通り、その場所に人気はなく、くるりと振り返りながらが言う。 「そうだったか?」 『そうだと思いますよ。少なくとも、坊ちゃん達がと出会った以降は』 「あいつらはお構いなしに騒いでたがな」 シャルの言葉にジューダスが返し、がくすくすと笑う。 「なんだ?」 「いや、最初はともかく、ジューダスも結構加わってたなぁ…と」 「そんなことはしてない」 「してたよ。忘れてるだけで」 「してない」 「してたってば」 むきになるジューダスには笑いながら返す。 「まぁそれはおいといても……しばらくはゆっくり出来そうだよね」 どこか意味深な発言にジューダスとシャルは首を傾げるが、はただ笑うだけだった。 その後は比較的、平和に日は過ぎていき後もう少しという所だった。 その日もはロニの愚痴に適当に相槌を打ちながら、船室で備え付けの本等を気まぐれに読んでいたのだが、突然の揺れに思わず本を閉じた。 「な、なんだぁ?」 「すっげぇ揺れだな。…あぁ、ロニ。昨日辺り船員に聞いたんだが」 「は?」 「ここ、デビルズリーフらしいぞ」 ・・・・・・・・ 「それを早く言えーっ!」 どこか悲痛な叫びをさっくりと無視し、慌てず騒がずはカイルとリアラの武器をロニに渡す。 「とりあえず、ロニは二人を探してくれ。俺は達を探すっから」 「あいつら武器持っていかなかったものな…」 「普通、船旅中は持っていかないしな。そもそも魔物に襲われるとは思わんだろ」 「そりゃそうだ」 それじゃ、頼む。と二人は駆け出した。 07/8/17 up |