「なんで僕なんだ…」 ある朝の事。いつもなら早いが中々起きてこないので一番暇だったリオンに白羽の矢がたっただけのこと。 『でも珍しいですよねー。あの一番に起きるが』 「大方、本でも読んでたんだろう」 コンコン、と(恐らく聞こえていないだろうが)が休んでいる部屋をノックする。 「、入るぞ」 ドアを開くと今だに眠っているの姿があった。枕元には本が一冊。リオンの推測どおりだった。 「、いい加減に起きろ」 「……ん…くー…」 声をかけるが起きる気配はない。仕方なしに肩を揺する。 「おい、」 いっその事、本で叩こうかと思ったとき、ゆっくりと焦茶色の双眸が開かれた。 けれどまだ覚醒はしてないらしく焦点が定まっていない。 もう一度呼ぼうとした所で、 すぅ、との手がリオンへと伸ばされた。 ゆっくりと手はリオンの顔に近付いてくる。それを、何故かリオンは避ける事はできなくて。 あと少しで触れられる 所での手は止まった。 焦茶の瞳に紫紺の色が映った。 永遠にも感じられる瞬間。 「…り…おん?」 ぽつり、と呟かれた言葉によって止まっていた時間は動き出した。 『おはようございます。。』 「んー…おはよう」 伸ばされた手がの双眸を覆うように置かれる。 それを見て、リオンは今まで息を止めていたことに気付き、溜めていた息を吐き出した。 「…遅い」 「あはは…ごめん」 いくなしか感情のこもらない声に気付きシャルが尋ねる。 『嫌な夢でもみたんですか?』 その言葉に、は一瞬目を見開き、嫌な夢ね。と口の中で呟いた。 「かもしれないね……ほんと、よかった」 そう言ってリオンの肩に頭を預ける。 「っ!おいっ!?」 慌てて退こうとするリオンにはごめん。と囁く。 ほんの少しだけ、このまま。 囁かれた声が微かに震えているのに気付き、はぁ。と溜息をつきながらリオンは勝手にしろと顔を背けた。 嫌な夢。 シャルの言う通りかもしれない。 暗い洞窟の中、血を流して、紫紺の光が徐々に弱まり消え逝く夢など。 これを悪夢と言わずになんと言おう? (怖かった…) 運命は変えることは出来ないのだと示唆されているようで。 自分には何も出来ないと言われているようで。 額越しに感じる人特有の熱に安堵する。 今はまだ、此処にいる。 確かに、存在している。 まだ、可能性はある。 「ありがと。もう大丈夫」 まだ、運命は決まっていない。 「それで?一体なんの夢を見たんだ」 「秘密ー。何、心配してくれたの?」 「そんな訳あるか」 『とか言いつつ、心配してるんですよね坊ちゃんは』 「黙れ」 『あはは坊ちゃん顔朱くー…「黙れと言ってるのがわからないのか?」 『うわーっコアクリスタル砕こうとしないでください流石にボクも壊れちゃいますからっ。』 「仲いいよねぇ」 「……」 「なに?」 「…なんでもない。起きたんならさっさとあいつらの所に行くぞ」 「うん」 先に行ってる。と言い残しぱたん、と扉が閉まる。 気配が遠退くとは天井を仰いだ。 実際のところ、変える事が本当に良い事か分からない。 変えれば未来は変わる。 未来が変われば彼等は会えない。 けれど変えなければきっと彼は… 「…堂々巡り、か」 起こりうる全てを知っている事を、この時ばかりは呪った。 |